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「まぁ、本人に覚悟はあるようだが、あの魔力じゃな。魔力はなくたってこの学校には通えるが、どうしたって一年生のうちじゃクラスカースト底辺になりがちだ。暗い学校生活に耐えられないかもな」
「クラスカースト? そんなものがこの学校にもあるんですか?」
「ああ、菊池先生は高校が百花出身じゃないから知らないか。普通の学校に容姿とか社交性とか学力とかでカーストが決まるけど、うちは魔力や能力からカーストが決まる。スカウト組は除外で。魔力っていう新しい価値観と憧れのせいかな。藤崎とか、あいつはカースト上位だろ?」
「あ、そうですね。あの子は普通に美人で委員をやって人当たりがいいから人気なんだと思ってましたけど……」
「藤崎はあの中じゃ一番の魔力の持ち主で、魔女という血筋もある。母親に習って魔法の勉強も予習してこの学校に来たんだ。この学校にやってきた生徒達からしてみれば憧れの的だろう。ま、スカウト組が来るまでの話だが」
藤崎レアは入学してからずっと人に囲まれている。クラス委員になったようだし皆から頼りにされているようだ。ただし彼女はこの学校にしては成績は良くないが、そんなものは入試さえクリアすれば関係ない。この学校にとって一番重要なのは魔力や魔法なのだから。
橘もきっと普通の学校なら家柄や成績から一目置かれていただろう。しかしそれらはこの学校的には無価値なもので、さっそくクラスから浮き出している。能力が高いだけならそこまで浮きはしないが、彼女はやたらとまっすぐすぎて目立つ。そのせいで反感を買うこともあり得るだろう。
「それって、もしかしたら橘さんがいじめられるってことですか?」
「一年生の中でいじめが起きるとしたら、標的は橘になるだろう」
「何を呑気な事を。自分の担当クラスでいじめが起きるんですよ?」
「人間はいじめをする生き物だよ。それは国に保護される前の菊池先生もよく知っているだろ?」
思い当たる事があり、菊池は黙った。彼女はその能力から隠れるように生きていたし、能力を気味悪がられる事もあったはずだ。
どうしたって少数派は多数派に負ける。子供も大人も、普通と違うというだけで攻撃はするものだ。価値観が違う魔法学校だからといってそこは変わらない。むしろ世間と違う価値観からのいじめが起こりやすい。
「そういう生き物なんだから仕方ない。俺達教師がいじめに対してできるのは目を光らせることと、その後の対応だ。まぁ、あいつの家は金持ちならボディガードも弁護士も雇う財力がある。ちょっといじめただけでかなりの反撃を食らうし、いじめっ子だって馬鹿じゃないんだ。そういう奴を執拗にはいじめない」
櫻田は冷めているが冷静に判断する。やはり彼は無気力でネガティブだが生徒の事はよく見ている。これから橘はいじめられるかもしれないが、彼女ならなんとかできる。
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