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そんな話をしているうちに、急に菊池は目元を押さえた。激しい痛みでもあったかのような動きなため、二人は会話を中断する。
「ちょっと待ってください、これ……」
「どうした?」
「未来が見えたんですけど、なにこれ、きもちわる……」
「ああ、ゆっくりでいいから言ってくれ」
顔をしかめたままこわばった菊池を櫻田は椅子に座らせて待つ。菊池がふとした時に見るらしい未来予知。予知能力の精度とただならぬ様子の菊池のせいか、妙に胸騒ぎがする。
「橘さんです。彼女が白のセーラー服を真っ赤に染めて倒れています」
「……え?」
「頭から全身、血塗れになっているみたいです。肌の色も血の気がなくなって」
青くなり震えながら菊池は言った。きっと彼女も慣れていないくらい凄惨な未来が見えたのだろう。それが血塗れになった橘。前回の一件で彼女の未来予知を信用している櫻田は血の気が失せた。
「それは……誰かにやられたのか? それとも事故で?」
「わかりません。結構先の未来で、私が見たのは一場面なので」
「場所は? 時間は?」
「明るいから朝昼で、場所は……学校でしょうか。床板がフローリングだった気が」
「血の量は?」
「頭から服が血塗れになるくらいなので、かなりの量かと思います。彼女、体が小さいからあの量は危険かもしれません」
聞けば聞くほど未来の橘の状況は悪い。出血量を考えても危険だし、その出血量では大きな怪我をしている可能性が高い。もしかしたら頭を割るような怪我をしたのかもしれない。
とんでもないことになった。未だに菊池の顔色は悪いままだ。今は元気に過ごしている生徒のそんな姿を見ればそうなっても仕方ない。
「その未来予知が外れるように行動しよう。未来はきっと変えられるんだろ?」
「それが……私の予知は最近回数は減っても精度が増してて。予知が外れたことってなかったような」
「そうか……」
これほどまでに予知が外れてほしいと思うことはない。しかし菊池の能力の精度は上がっている。また次の予知を期待し、そこから回避する策を考えた方がいいのかもしれない。もしくは、起こってしまった後の事についてを考えるべきだ。
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