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「ていうか菊池先生も集中してくれ。君の仕事は俺が間に合わず爆発した未来が見えた場合に、なりふり構わず一人でも多く生徒を避難させる事だ」
「は、はい。でも私まで現地に来なくても良かったのでは?」
「魔力は生存本能から自分の身に危険が迫るほど増幅するから」
「つまり私を危険にさらして反応をよくするためですか……」
ぞっとしながらももっとぞっとする事件がおきないよう菊池も集中する。菊池は保険だ。間に合わなかった時、多少のパニックは覚悟で生徒の避難を確実にするための。
しかし一番危険なのは櫻田かもしれない。最後まで誰よりも爆弾の近くにいなければならないのだから。やっぱりこの教師はいい教師なのだろう。菊池は彼の言葉を行動を信じる。
講堂内では教頭により式の不備から一時退出するお願いが放送されていた。
その時、櫻木には見えた。
「舞台下だ。パイプ椅子を収納するスペース。そこに爆弾がある」
「本当ですか!?」
「……だめだ、遠隔で通信により起爆するタイプだ。これじゃこちらの動き次第で起爆されるかもない」
爆弾とはしかけた犯人がスイッチを押す事で爆発するものらしい。つまりこちらが生徒を逃がそうとしたり、爆弾解除のプロを呼んでいるうちに起爆されるかもしれない。
犯人が近くにいるのならそこまで大きな爆発はないかもしれないが、殺傷力は高そうだ。
「じゃあ、今が一番危ないのでは?」
菊池の声。生徒の退出を開始した今。それを犯人は見ているかもしれない。
櫻田は動く。魔力を舞台下に集中させる。
低い音が響いた。
「ば、爆発した!? あれでも私達無事だし」
「爆発はした。けど被害を抑えた」
「なんですか、聞こえません!」
大き過ぎる爆発音のせいで二人の耳は聞こえにくくなっている。けれど櫻田は構わず説明をした。
「魔力を微粒子にして視界にしているって言っただろ。それを爆弾周りに集中させて、ぴっちり囲んで、硬化させた。爆発はしたが魔力の壁である程度防いだってわけだ」
「説明されてるんだろうけど聞こえません」
「ただ、舞台下はめちゃくちゃだろうな。そこまでは間に合わなかったから。けど怪我人はゼロ。念の為校庭への避難を続けよう」
つまり爆弾は爆発したが、強固な物質で密閉したため被害は舞台下だけで抑えられた。どのみち爆発音でパニックにはなりかねないし、二個目の爆弾があるかもしれないので避難はさせなくてはならない。
「……よくわからないけどですね、そもそもこれだけ危ない場所にいる私が爆発した未来を見てないというのがすべての答えですよね。本当に爆発するなら生存本能から予知できてもおかしくないし、私が予知できたのは『慕われてる櫻田先生』だけだし」
「なんだ? 何言ってるのか聞こえない」
「最初から櫻田先生は慕われる未来しかない、ってことですよ」
爆弾はギリギリ防いで終わり、ではない。これから『慕われてる櫻田先生』が控えている。
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