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「先生! 聞きましたよ、櫻田先生が爆弾を止めたって!」
「生徒のため危険な場所に残るなんて、教師の鑑ですね!」
「僕達、先生みたいな魔法使いになりたいです!」
櫻田は生徒達にわかりやすい程に慕われていた。爆発の後、精神干渉する魔法が使える教師と警察により犯人確保。犯人はやはり魔法アンチの一人で、デモの中に紛れ起爆スイッチを押す機会を窺っていたという。
それから安全を何度も確認し、改めて説明と入学式をやり直して、櫻田の担当するクラスでは進行を無視して生徒達は櫻田を称賛したのだ。
それは菊池が見てきた予知そのままである。それに櫻田は死んだ目を伏せる。たしかに生徒達は守りたかった。けれどそれは子供が傷つくのは気分が悪いという、大人なら普通に持っている考えからだ。教師云々は関係がない。
「爆弾を魔法で封じこめるなんて、やっぱり魔法はすごい!」
「馬鹿だな、魔法がすごいんじゃなくて先生がすごいんだよ」
「先生って百花の生徒だったんでしょう? 先輩で先生がそんなすごい人なんて私も誇らしいです!」
櫻田はただ、魔法学校に浮かれる生徒達の夢を砕いてやりたかった。
いくら認められたって自分達は過去はくがたようなはみ出しものだぞ、政府が資源不足や人材不足から手のひら返してすり寄ってきているだけだぞ、魔法だってできる事は些細な事でそんないいものじゃないんだぞ、と言いたい。
そして目立たぬよう与えられた仕事を淡々とこなせ、櫻田が教師になって一番教えたいのはその事だ。
なのに爆発を魔法で防いだということで、生徒達の魔法や魔法学園への期待は消えない。
こんなはずじゃなかった。しかし今この場で後悔しているのは櫻田だけである。
END
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