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◇ ◇ ◇
「陽乃ちゃん、誕生日おめでとう!」
次の日、目覚まし時計となったのはレイちゃんのとんでもなく――鼓膜が破れそうなほどに大きな声と、クラッカーの破裂音だった。
「あーんど、メリークリスマス! はい、陽乃ちゃん、これ、わたしからの誕生日プレゼント」
まだ覚めない頭。ぼうっとしていると火薬の匂いが鼻と喉に入り込んできて、咳き込んだ。
そんなわたしにお構いなしに、レイちゃんはわたしに赤い包み紙を白いリボンでまとめたものを渡した。「ありがとう……」それでも覚めなかった頭は、包み紙を乱暴に開け、中身を確認すると一気に覚めた。
レイちゃんからの誕生日プレゼントは、真っ赤なファーフード付きのコートだった。それは、二学期が終わる直前の三者面談の帰り道、通りがかった駅前の服屋のウィンドウでわたしが目を奪われたものだった。
「……姉さん、わたしのことよく見てるね」
「もちろん。陽乃ちゃんのことなら、なんでもわかるんだよ。お姉ちゃんだからね」
お姉ちゃん。レイちゃんがその言葉を口にすると、息が苦しくなるほど胸が締め付けられた。本当に、世界で一番素敵なお姉ちゃんだ。わたしは言い聞かせるように心の中で唱え続けた。
コートを自分の部屋に飾ってからレイちゃんに引っ張られるようにしてリビングへ向かう。そこには、何枚も重ねた新聞紙を床に広げられ、その上に墨と半紙が用意されていた。
「さあさあお座りください」
「なんなのそのテンション……」
「今日は陽乃ちゃんの誕生日だからね。わたしは、陽乃ちゃんの召使になるよ」
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