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『あなたが好きです』
何度書いただろう、この言葉。俺は学校で代筆の依頼を受けている。
依頼といっても完全に好意でやってる事なので、缶コーヒー一本とかチョコ一箱とか、そういったもので現金はもらっていない。
本当はそれすらもいらないのだが、依頼主の気持ちとしてありがたく受け取る事にしていた。
どうしてこうなったかと言うと、以前字が綺麗だからと友人にお願いされてラブレターの代筆をした事があって、その恋がうまくいった事から他の人からもお願いされるようになったのだ。今時ラブレターっていうのが古風だとかなんとかでウケているらしい。
直接頼みに来る人もいればこっそりと俺の机の中にいれてある場合もある。
ラブレターの代筆は素直に応援したいという気持ちが強いし、自分の恋がうまくいかない事を知っているからなおのこと他の人にはうまくいって欲しいと願ってしまう。
勿論内容は依頼主に書いてもらってそれを俺が綺麗に書くだけだ。
なぜか俺が代筆したラブレターの成功率は今のところ100%だ。
俺としても嬉しい事だが、俺はいつもある依頼を持ち込まれる事を恐れていた。
それは、
「奈津、帰ろうぜー」
この男、大杉龍矢へのラブレターを頼まれる事だ。
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