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それから数日後、ついに恐れていた依頼を受けてしまった。
朝学校へ行くと、龍矢宛てのラブレターの依頼が机の中に入れてあったのだ。
送り主の名前は書かれていなかった。直接手渡しするのだろう。
とうとう来てしまった。
それでも、受けないわけにはいかなかった。
誰かを好きになる気持ちが痛いほど分かっていたから。
だから、たとえ龍矢宛てだったとしても受けるしかなかった。
だけどなるべく後回しにして、時間をかけて、少しでも龍矢の元にこのラブレターが届くのを遅らせた。
罪悪感に胸が痛んだがこのラブレターを受け取った龍矢がOKしてしまったら、と思うと手が震えてうまく書く事ができなかったのだ。
それでもなんとか書き上げて自分の机の中に入れた。
そして机の上に合図となる物を置いておく。
この合図に使われる物は依頼主がラブレターの原文と一緒に同封されていた物で、間違って持っていかれないようにという配慮だ。
かわいいリスの人形。
きっとかわいい女の子なんだろう、と思う。
俺が女の子だったら龍矢にラブレター書けたのかな。
こんな風に気持ちを伝える事ができたのかな。
龍矢に「好き」って言えたのかな。
俺は溜め息をつくと、心の中で涙をこぼした。
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