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俺がぶりっ子隊長になった顚末
疲れた。
俺、樋口雅人(ひぐちまさと)もといティグリスは盛大な溜息を吐きながら机に突っ伏して唸り声をあげた。
何故名前を言い直したかって? 事情を説明するとなると長くなるが、今の俺の苦労を語るには必要不可欠なので話しておこう。
語るも涙、聞くも涙の物語だ。
もともと、俺は至って平々凡々な家庭に生まれた頭も運動神経も並の普通の男子高校生だった。樋口雅人って名前も、まあ鈴木とか佐藤に比べれば珍しい苗字の方だが親の名前の一部をとって雅人なんて名付けれた辺りも一般的でキラキラネームとかではない。親友からは、まーちゃんなんて呼ばれていた。
そんな俺が何故ティグリスなんて名乗っているのか、生粋のTHE日本人らしい黒髪黒眼ではなく、ふんわり銀髪に翡翠の瞳なのか。
ついでにいうと、何故平凡な容姿が女の子みたいなキュルキュルな美少年なのか!?
それは1ヶ月前に遡る。
俺がまだ樋口雅人を名乗っていた頃、高校からの帰り道ソレは突然起こった。
その日、昨日発売したばかりのゲーム「悠久のシーナリー」を全ルートを攻略し終えるまで徹夜でプレイしていた俺は急激な眠気に襲われた。くらっとして、一瞬気を抜いた時には長い階段を登る途中で阿呆にも足を踏み外してしまっていた。
背中に冷たいものが瞬間的に走り、世界がスローモーション。ヒュッと息を飲み、あ、とかなんとか小さい声が辛うじて喉から漏れたがそれだけだ。俺の体はそのまま後ろ、つまり下へ引っ張らられ……うん。
最後に何か声が聞こえたけれど、近所の誰かが俺が階段を落ちるのを目撃したんだろう。
そして、気が付いたらここにいた。
夕暮れと夜が混ざったような色に輝く空、見たこともない広い大地。それ等を見た俺は、ここが天国なのかと思った。
その証拠に起き上がった俺の体には違和感があった。手や身体が一回り小さくて、声も声変わりする前のように高く可愛らしかった。
まさに天使に生まれ変わったように!
あ、そうそう。ここと言ったが正確には聖都ユミリルだ。俺がいた日本とは全く違う世界の中心都市で王族に仕える為の騎士学校がある。俺はその聖都の近くの森で目を覚ましたらしい。
違う世界。
そう、ここは天国じゃなく異世界だった。
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