第十六章 家族

1/8
前へ
/169ページ
次へ

第十六章 家族

 安藤邸から芳樹のマンションへ運び込まれた青葉の荷物の中に、その大切な封書と名刺は入っていた。  青葉の父が、生前彼に託したものだ。 「名刺を見せてもらっても、いいか?」 「どうぞ。弁護士さんみたいなんですけど」  名刺には、『法律事務所』『弁護士』と前置きが付いた後、『倉崎 真司(くらさき しんじ)』とあった。  後は、電話番号などのアドレスだ。 「封書は開けずに、この倉崎氏へ渡そう」 「僕も、それがいいと思います」  青葉は、アポを取って芳樹と二人で彼を尋ねることにした。 「それにしても、この封書のことすっかり忘れてました」 「私が、人さらいみたいに連れてきちゃったからな」 「ホントですよ。でも、おかげで気持ちの整理がついてから、封書の秘密を知ることができます」  青葉はマスタングの助手席で、懐かしい父の筆跡を指でなぞった。 「倉崎 真司様、かぁ」  どんな人だろう。  そして封書は、どんな内容なんだろう。  思いを巡らすうちに、芳樹の運転する車は事務所に到着した。
/169ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1021人が本棚に入れています
本棚に追加