第十七章 怜と青葉

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「お兄様にお会いできて、僕は本当に嬉しいんです。これだけは、解ってください」 「僕は……、僕も、嬉しいよ。だけど、芳樹さんの愛人だなんて、あんまりだな」  愛人、という言葉で、怜は心の均衡を保った。 「芳樹さん、この縁談は双方にとって利益を産みます。僕と、結婚しましょう。青葉くんは、愛人として認めます。だから」 「怜くん、青葉は私にとってかけがえのない人なんだ。愛人では、おさめられない」  ぽろり、と怜の瞳から涙がこぼれた。 「え? あ? 僕、何を泣いて。嫌だな、どうしたんでしょう、僕」  芳樹は、その姿にひどく心を傷めた。 「傷つけてしまって、本当にすまない」  涙を拭く怜に青葉が近づこうとしたが、芳樹は黙ってそれを止めた。  そして、そっとその背を押すと、テーブルから離れ、去って行った。  残された怜は、止まらない涙に困惑していた。  
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