第十二章 聖夜のプロポーズ

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「うぁ! おいしそう! それに、クリスマスっぽい!」  テーブルの上には、小さな可愛い金色のツリーが飾ってある。  とっておきのカトラリーが銀に光り、真っ白いナプキンに映える。  鶏肉と里芋のクリーム煮、温野菜のサラダ、茹で豚ときゅうりの雲白肉、りんごのコンポート。  風邪をひいて胃腸が弱っている芳樹のために作られた青葉の料理は、彼をひどく喜ばせた。 「食べたらすごく温まったよ。力も湧いて来た」 「残さず召し上がってくださるなんて。もっとたくさん作っておけばよかったですね」  デザートは、生クリームの使われていない、シンプルなクラシックチョコレートケーキ。  これも、青葉の手作りだ。 「風邪をひいた時はチョコが体にいい、って通説があって。ホントかどうか解りませんが」 「いや、油分の多いクリーム系より、今はこのケーキのほうが美味しいよ。ありがとう」  アルコールやカフェインも今の芳樹にはよくない、とワインもコーヒーも取り上げられてしまったが、そんな青葉の用意したハーブティーからは、素敵な香りが漂っていた。 「ハーブティーなのに、匂いがきつくないね。これは何?」 「ほうじ茶に、エキナセア、カモミール、タイムをブレンドしたんです」 「すごい。こんな方法があるなんて、知らなかったよ」  もちろん、芳樹はそれをありがたくいただいた。  どんなビンテージワインより、青葉ブレンドのハーブティーは芳樹の喉を潤した。
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