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私の愛はどこに
一度嫌いになったら、それはまた蘇り消えてはくれない。
好きが消えないのと同じで、嫌いも消えない。
それを実感したのは、私の口から出る「好き」が空っぽだと確信したから。
好きになった時、私は温かい気持ちが溢れて、その温かさが私の中の何かを溶かして涙になって、頬が思わず緩んでしまう――そんな感情を引き出していた。
けれど、今の私はどうだろう。
「好き」
喉に心地よいレモネード。
口の中で蕩けるガトーショコラ。
ほんのり塩味がきいたほかほかのおにぎり。
私を気にかけてくれる優しいお母さん。
真っ直ぐな「大好き」を向けてくれる子ども。
全てにおいて私を優先してくれる旦那。
全部等しく「大好き」なのに。
「好き」を口にしてから妙な吐き気と、眩暈と、困惑が私を満たす。それまでは、好き、と口にするたびに幸せに満たされていたはずなのに。
――いつからこんなにまで、無になってしまったのか
原因は、わかっていた。
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