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「……ねぇ、あのね。今日、子どもの注射行くんだけど。予防接種。自費だから、少しかかるんだけど」
「おう、勝手にせぇや」
ああ、痛い。苦しい。しんどい。
幸せじゃないのに、私の感情が溶けて溢れてしまう。
数か月前、私は旦那と喧嘩をした。
些細なことがきっかけだった。確か、私が買ったばかりの化粧道具を邪魔だからと勝手に捨てたことだったかな。ゴミ箱に雑に捨てられたそれらを見て私の中の感情がすっと冷えて、何もかもがどうでもよくなった。だから私は彼に微笑んで「わかれようか」と告げた。
そんな私に何故か彼は焦って、謝って、「嫌なことは直すから」と懇願した。そこで私は、笑いながら「じゃあ、勝手にしろって言葉、やめようね」と言った。
どういう意味か解ってなさそうだったから「まぁ期待してないけどさ。勝手にしろって言葉さ、一番相手のことを何にも思ってない言葉だよね」て笑ってあげた。
「何でもいいよ」「どっちでもいいよ」という相手任せの言葉と一緒で、自分は一切悩まず相手に丸投げできる楽な言葉。勝手にしろ、という言葉は、さらに思いやりのかけらもない言葉なんだと私は感じている。
話し合ってから、1ヶ月間は守ってくれた。
だから私は、期待をしてしまった。
――でも、人ってやっぱり、本質は変われない
「ねぇ、ご飯なんだけど、今日はお魚でいい?」
「おう、勝手にしろ」
ある日、そう言われた私は。
何かが崩れる音を確かに聞いた。
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