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呟いてから、私は下の石に〝ぐちききじぞー〟と書かれていることに気づいた。
――愚痴を聞いてくれるお地蔵さん、ということだろうか
私は、フッと乾いた笑みを零した。
そして隣で好奇心のままに置物をじぃっと眺めている娘を見た。
「……子どもの前で、吐けるわけがないじゃない」
口の中で呟いて「さ、そろそろ帰ろっか」と娘と手を繋いだ。
娘が手を振るリズムに合わせて腕を振っている内に、家には程なくして着いた。すると、娘が「えへへー」と笑って何かをポケットから取り出した。見るとそれは、先ほどのお地蔵さんよりも綺麗な丸い形をした、表面が思わず指でなぞりたくなるほどの滑らかさを魅せる石だった。
「すべすべー」
娘は両手の中ですりすりと撫でまわして喜んでいた。どうやら感触が気に入って、こっそり持って帰ってきてしまったようだった。
普段なら外で拾ったものは捨てさせるのだが、私もなんとなく置いておきたくなり、綿棒が空っぽになったプラスチックケースに入れて食卓に置き、なんとなく和んで見ながらご飯を楽しんだ。
ニコニコと「石さーん」と喜びながらご飯を食べる娘に、たまには外で拾ったものを飾るのもいいか、と、胸の奥の方がポカ、と温まりかけた、が、「ふーん」と適当にあしらい飾ったものに一切見向きも興味も示さない旦那の顔に、私の温かさは消え変わりに氷のような冷たさが残って、その感覚さえも消えた。
感情が消えると時間は立つのが早く、あっという間に娘の就寝時間になり、娘を寝かせるために私は同じ布団にもぐりこんだ。
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