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常日頃から思っていることをぽろりと零すと、「ほー、えらいふわっとしちょんなぁ」と返された。言った自分でも思ったので、そう返されても仕方がない。
「……でも、本心ですね」
「ほーん」
神様はじっと私を見た。
細い線だけの目がうっすらと開き、ゴマのような小さな黒い点が私を見据えていた。
「何が、嫌じゃ」
「え」
「何が、嫌いじゃ」
「ええ?」
「こたえんしゃい」
有無を言わさぬ言葉に、私の脳裏を咄嗟に過ったものは、ある。
けれどそれを口に出すのは、何か重い決断を強いられたかのように口にするのは憚られた。そんな私の心情を見透かしてか、神様は「かまわん。言いんしゃい」と促した。
「……旦那が、嫌です」
言った瞬間、ヒュっと酸素が吸えなくなった。
苦しくて、眩暈がして、思わず首を抑えた。
「ほぉん。どこが嫌じゃ」
神様に聞かれると、呼吸がヒュっと戻った。
答えるために呼吸が戻されたのだろうか。
嘘のように消えた苦しさが、代わりに背中を押す軽やかな気持ちに変わった私は、今度は悩むことなく「言葉と、態度と、興味を示さない表情、が……」とずっとずっと胸にしまっていた心を吐き出した。
けれど言えば言う程。
言葉にしてしまう程。
何故か、心臓を握られているかのような苦しさが急に体中を駆け巡った。
「どんな言葉が嫌じゃ」
「勝手にしぃ、とか、あっそ、とか」
「ほぉん。で、態度は」
「挨拶を無視したり」
「ふむふむ」
「……でも」
「おん? でも?」
「……っ」
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