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この言葉はちゃんと私の口から発音されただろうか。涙に濡れて震えた言葉はちゃんとした音になっていたのだろうか。わからないけれど、でも、神様は私に、にこやかに微笑んだ。
そして頬をそっと撫でてくれた。
手はないはずなのに、温かいものに撫でられて、そう感じた。
「あんさんは優しいねぇ」
手の中の神様が、優しい優しい微笑みを浮かべた。
「人を嫌いになる自分が、いっちゃん嫌いで許せへんのやろ」
カチリ
わからなかったパズルのピースが、ハマる音がした。
「わがままやなぁ。好きと嫌い、両方あるから好きがあるんやで。愛ってもんがうまれるんやで? どっちか片方なくそうとしたら、そら、無になってまうわ」
頬を撫でながら、神様は言葉を繋げる。
紡がれるたびに、私の涙が無言で頬を伝っていく。
「ええよ。大丈夫。みんな、そんなあんさんが好きやから。好きになってくれとる人は、おるんよ。せやからな、お前さんが一人になることはそうそうあらへんから、怯えんとき。ええねん。嫌いって感情も大事なんや。せやからの、自分をそない責めんときのぅ」
そう言って、神様はつるっとした頭を私に向けた。
「さぁ、ここに吐き。わしが真っ黒になるくらい」
その言葉の意味は、聞かなくても私は分かった。
私は灰色の石を口元へ寄せて、呟く。
「嫌い、嘘つき、バカ」
私が言葉を紡ぐと、灰色が黒色に滲む。
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