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どこで失敗したのか、もう分からない。
全て上手くいってると思ったのに。世界はわたしの手を離れて歩き始めたと思ったのに。それはわたしの思い込みだったみたい。
真っ赤に燃えるわたしの世界。美しくて嫌になる。
男爵は少し憎々しげにわたしを見ていた。
失敗したらもうどうでもいいのね。わたしはもう用済み。
わたしの世界が崩れていく。火を消してと頼んでも誰も取り合ってはくれない。
本当は分かっていた。
妄想なんて吹けば消える蝋燭の火よりも儚いものだって。わたしの手から消えてしまえばそれで終わり。だからわたしは確かなものにしたかった。だってわたしは妄想の中でしか息が出来なかったから。
わたしが選ばれた時は本当に嬉しかった。神は本当にいるんだ、わたしの理想が作れるのなら全て捨てたって良いと思った。そしてわたしは全てを捨てて、失敗した。もうわたしには何も残っていない。パンドラの箱の底には希望も何もない。
わたしの意思に関係なく契約は遂行される。いかなる理由があろうと失敗すればわたしという存在は消えなければいけない。でもわたしにはそっちの方が良いかもしれない。一度捨てた現実でまた生きる意味なんて、どこにあるの?
綺麗な野山が広がっていた。一本道が優雅に伸びていて、左右には美しい草花。ここは天国?それとも夢?
わたしの好きな花がたくさんあるから、きっとこれは夢。この中で暮らすのもなかなか、悪くない。
花を愛でながら楽しく歩けば、分かれ道に辿り着いた。そしてそこにはあの子がいた。
わたしは謝らないから。わたしはわたしの行動に後悔はしていないし。間違ってたなんてひと欠片も思ってない。
「そうだろうね、そうだと思ったよ。そうじゃないと、君じゃない」
さすが。わたしのことをよく知ってる。ところでわたしと一緒に来てくれるよね?だってあなたは私なんだから。
「もちろん。君のためならどこまでも行くよ。君の永遠の味方だから」
これからここで新しいストーリーを作ろうと思うの。ここはお花も全部可愛いし、最高だと思わない?
「確かに最高だけど、ここよりもっと良い場所に案内してあげる。君のために、とっておきの場所を探したんだ」
ほんとう?!あなたが言うなら間違いないよね!
これからはちゃんとあなたに付いて行くから、わたしを喜ばせる場所に連れて行ってね。
そして私はあの子に手を引かれて分かれ道の先へと進んで行った。
もう皆さんにも、現実にも会うことはないでしょう。皆さんに幸多からんことを願います。
それでは、さようなら。
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