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人間は自由の刑に処されている
lion heartーライオンハートー
あるところに、ひとりのなやめるせいねんが いました。
せいねんは さきのみえないみらいへ ふあんをもっていました。
あるひ、せいねんは 「どんななやみもかいけつしてくれる」というふしぎなまじょのうわさを
みみにしました。
せいねんは じぶんのなやみをかいけつするため、そのうわさのまじょのもとへ おとずれました。
なやみをきいたまじょは いいました。
「わたしのうたをきけば、そんななやみは すぐにふきとんでしまうでしょう」
それをきいたせいねんは よろこびました。
ぜひそのうたを きかせてほしい。
せいねんは まじょにたのみました。
まじょは うたいはじめました。
「まいごのまいごのライオンさん
あなたはいったいだれですか
おうちをきいても わからない
なまえをきいても わからない
わぉーんわぉーん わぉわぉーん
わぉーんわぉーん わぉわぉーん
ないてばかりいるライオンさん
にげていくおまわりさん
ライオンひとりで
わぉーんわぉーん わぉわぉーん
わぉーんわぉーん わぉわぉーん」
そのうたをきいたとたん、せいねんは じぶんのからだがおかしいことにきづきました。
したをむけば、どうぶつのまえあしが みえたのです!
『なにがおこったんだ?!』
せいねんは そうしゃべったはずでしたが、きこえてきたのは
「わぉーん?!」
でした。
せいねんは ますますわからなくなりました。
まじょは そんなせいねんをみて、クスクスわらいはじめました。
そしてちかくの かがみをゆびさしました。
「ごらん。これであなたは さっきのちっぽけななやみを かんがえるひまなんて なくなったでしょう?」
かがみをみたせいねんは おどろきました。
そこには いっぴきのオスのライオンが うつっていたのです!
『もとにもどしてくれ!』
「わぉわぉーん!」
せいねんは まじょにうったえます。
しかし、まじょはくびをかしげるばかり。
「あら?なにをいいたいのか わからないわ。
わたしは ライオンではないのだから」
『ただのいいわけだ!ずるいぞ!!』
とぼけるまじょに ひっしにうったえたせいねんでしたが、なにもかいけつしませんでした。
けっきょくせいねんは まじょのいえをおいだされました。
ライオンになったせいねんは だれかたすけてくれないかと まちへいきました。
しかし、ライオンをみたまわりのひとたちは みなこわがりにげだしました。
ライオンのまわりには だれもちかづきませんでした。
ライオンになったせいねんは だれかにつうじるかもしれないと ひたすらなきごえをあげつづけましたが、それがぎゃくに ひとびとをこわがらせてしまいました。
ライオンになったせいねんは ひとりでただあるきつづけるしか ありませんでした。
どこへいっても ライオンはひとりぼっちでした。
なきごえがだめならと、みぶりてぶりをしてみましたが、ライオンにできることはすくなく、おそわれるとおもわれて さらにひとはいなくなりました。
ライオンのきもちがわかるひとは、とうとうひとりもあらわれませんでした。
ライオンはつかれてしまったのか、だんだんじぶんじしんのことが よくわからなくなってきました。
じぶんはだれなのか
なにがしたかったのか
どうすればいいのか
もうなにもかも、なげだしてしまえたら
そうおもったとき、ライオンのまえに ひとりのおじさんがあらわれました。
おじさんもまた、ひとりぼっちでした。
おじさんにも、ライオンのいいたいことは わかりませんでしたが、ひとりぼっちのライオンのきもちは なんとなくわかりました。
おじさんは いきるきりょくをなくしかけているライオンがほうっておけなくて、おもわずこえをかけました。
「おまえもひとりなんだな。
おれもひとりだ。おれとおまえは ひとりぼっちのなかまだ。
おれといっしょにすごさないか?」
ライオンはおじさんのことばをきいて、かおをあげました。
おじさんはライオンにむかってやさしくわらい、てをさしのべていました。
ライオンはじぶんのこころに、あたたかいなにかがうまれたきがしました。
それからライオンとおじさんは いっしょにすごすようになりました。
そんなふたりを とあるサーカスでみかけたといううわさがひろがるのは、もうすこしさきのはなしのことです。
めでたし、めでたし。
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