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想世界は現実の夢を見る
「平凡」
それは泣きたくなるくらい幸せな言葉。
人に語るような話も、人に誇るような話も持たず、この世界でただ酸素を吸って、二酸化炭素を吐き出す。
そして時に他者を哀れむことで、心のどこかで天才になりたいと喚く自分を「平凡こそが幸せ」となだめる。
そうです、私は今とても幸せです。
当然のように家族がいて、毎日三食、寝床があります。大学まで通い、会社に勤めています。もちろん馬鹿なことを言い合える良き友もいます。
こんな幸せ、他にあるでしょうか?もう十分すぎる程でしょう。これ以上何を望むというのでしょう。
人間には多かれ少なかれ衝動というものがあって、その衝動は常に不安定を望んでいる。ゆえに人間は当たり前が嫌になる。誰もが羨む幸せを、原型を留めないほど破り捨ててしまいたくなるのだ。
私の衝動は、自覚した時にはもう常識という鎖に縛られていた。己の衝動を押さえ付けて生きるにはあまりに空虚で、表に出すにはあまりに己が「大人」になりすぎていた。そんな私を救ったのが妄想だった。妄想の中でなら現実には不可能なことも出来るし、誰にも邪魔されなかった。妄想は私の一部になった。
その妄想が小説に形を変え始めたのは必然だった。小説は妄想というあやふやなものを明確なある種の世界にした。その世界は閉鎖的ではあるが美しいものだった。そしてそこにはまさに私の追い求める理想の世界があった。
わたしはとても幸運な人間です。
なぜならわたしは選ばれたから。
わたしによるわたしのためのわたしだけの世界をこの手で作り上げ、またその世界に在ることの出来る資格を手にしたのですから。
現実なんて、名誉やお金があってもつまらないもの。馬鹿みたいにしがみつくくらいなら、捨て去ってしまった方が楽でしょう。
結局わたしはただ、わたしのために人生を歩みたいだけなのです。だから
「わたしのための、最高の世界を」
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