ランブル

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   真惟は昔から可愛いかった。見た目もそうだけど性格が人懐っこい上にビックリするくらい優しくて、男子女子、校長先生含む教職員からもモテモテなヤツだった。 『柴犬みたい』と女子は言い、ついでに『これで背が高かったら完璧だったのに』といつも揶揄われていた。異性としてモテると言うよりは、女友達の延長みたいなノリで『まいまい』と呼ばれていた。 「うっちー、シュー練いこー」  バスケ部だった俺らは昼休みは毎日体育館に居た。真惟のポジションはポイントガード、且つ3ポイントシュートに定評があったけれど、それはこうした日々の弛まぬ練習の成果だったんだろうと思う。 「うっちーみたいに背が高かったらなー」 「チビでもガードで小中選抜メンバーなくせに贅沢言うなし。高校も市高にバスケ推薦だろ」 「いーや、俺、高校入ったらバイトしたいから部活はやらん」 「……………」  なんかショックだった。普段から真惟は『うちは貧乏』とか『ど底辺』とかよく口にして笑いを取っていた。校区内の団地住まいで『治安悪いとこ住み』だとも。  それがどう言う意味なのか当時の俺にはイマイチ理解出来てなかったけど、親の職業とか母ひとり子ひとりとか、俺らにはどうする事も出来ない『環境』ってヤツは子どもの進路にも影響を及ぼすんだと知った。  テンテンとボールをつきながら。  口角は上がっているのにどこか寂しそうな、大きな瞳を瞬かせる真惟を抱きしめたかった俺は、その頃もう真惟に恋をしていたんだと思う。
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