セクハラ魔王

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セクハラ魔王

 魔王の粋な計らいでかなりの経験値を積み、めちゃくちゃレベルアップした勇者たち。 「もうこれ以上強くならねえよー」 「そうやなあ。お金もたくさん貯まったし。襲ってくるやつも『銀色』の泡っぽいスライムか『金色』のゴーレムばっかやったもんなあ。買える武器とか防具は一番高いの買っても有り余ってるし。わし、カジノで遊んじゃったもん」 「それにやたらレアアイテムも毎回もってたもんなー。お前さあー、『おみずのはごろも』とか今まで何回も戦ってきたけど一回も落としたやつおらんかったのが急にバンバン落とすとか絶対あれだろーが!前は『やくそう』とか『毒消し草』とか『ひのき棒』だぜ?」 「何を言っている。余は知らんぞ。たまたま偶然が重なったのであろう。幸運な奴めらが」 「へっ!まあ、そういうことにしといてやんぜ!でもよー。『まほうの食い込みビキニ』?あれも…お前か?あたしが着るとでも思ったのか?『お・も・い・ま・し・た・か』?このセクハラ魔王さんよお!?」 「ち、ち、違う!余は知らぬ!そんなの余の手下どもが勝手にやったんだろう…。そこはお互いの信頼関係ではないのか?」 「まあまあ、お前さあー。俺たちはこれ以上強くなれないぐらい強くなったぜ。短期間で宿屋泊まってないし。泊まる必要がなかったからな。でも、お前はどうなんだ?前々から気にはなってたけど。ぶっちゃけ、お前らって向上心がないというか。レベルを上げようとかしてるのか?」 「何を言うか!このたわけが!余を誰だと思っておる。魔王だぞ」 「でも勇者が言う通りやね。言われてみればお前らって『青い』スライムとかいつまでたってもあれやろ?これはお前、教育不足というか、怠慢って言われても仕方ないで」 「分かっておらんのう。よかろう。特別に教えてやろう。余や余の部下どもは…」 「てめえの話なんかは別に興味ねえし。『特別に』?聞いてねえし。何言っちゃってのこいつ。よくいるよなあー。こっちは興味ないのに『特別に』とか言って講釈垂れる奴なあー。こいつもそういうタイプだぜ?魔王だせー!ダセえぜ!」 「まあまあ、女賢者よ。言いたいみたいだし言わせてやろうよ。で?」 「…。ごほん。余や余の手下どもは『配合』と言ってだな。いわば合体である。その『配合』をすることによってだな」 「『はいごおおおおおお』?てめえー!どさくさに紛れてまたまたセクハラ発言かよ。やらしいよなあ。遠回しに『はいごう』って。男らしく直球で『交尾』とか言えよなあー」 「まあまあ、女戦士よ。あんまりそういう風に言うのはやめてあげた方がいいと思うぜ」 「ごほん。貴様らは何か勘違いをしているようだが、余は魔王だぞ。そういう感情は遠い昔にとっくに捨て去っておる。二千年前ぐらいにはそういうのには興味は持たなくなったものだ」 「でも『ハーレム』は一夫多妻のようなものではないかって即答してたじゃん。二千年前にって言われても、なあー」 「ごほん。とにかくその話はここまでだ。余が今より強くなるには『配合』をすればいいだけの話である。まあ、魔王だからな。これ以上強くなっても虚しいだけである」 「でも俺たちに負けたじゃん」 「いや、負けてないぞ。よく思い出してみよ。勝敗ついてないだろうが」 「それは負け惜しみじゃね?確かあの時『覚悟は出来てる』って言ってなかった?」 「あ、言ってた言ってた」 「貴様らあ!貴様らは四人がかりだろうが?余は一人だぞ?そこはどうなのだ?」 「いやいや。こっちもお前の側近どもと連戦だぜ?それはどうなん?」 「あ、そうそう。モヤモヤしてたけどそれや。それにこいつも戦いの途中で手下呼んでたよな?それはどうなの?こいつ魔王とか『余』とか言ってるけどいざ話してみると言い訳多いタイプじゃね?」 「(こいつらあーー!余が気を利かせて短期間でレベルアップ出来たくせに!調子にのりおって!)ごほん。何とでも言うがいい。それより貴様らはまだまだ成長の余地がある」 「そうなのか?魔王よ!?これ以上強くなれるのか?」 「貴様らは『転職活動』をしたのか?余が見た限り、そこの女賢者ぐらいではないか?女戦士は力は強いが動きが遅い。それに魔法の一つも使えないであろう」 「あ?強ければそれでいいじゃねえかよお!」 「いや、魔王の言う通りだ。女戦士に『素早さ』と『回復呪文』とか『蘇生呪文』が使えればさらに強くなれる」 「それにそこの僧侶。貴様も魔法を封じられたらただのお荷物であろう」 「何を!?」 「いや、確かにその通りだ。『転職活動』か。でも『転職活動』をするとめちゃくちゃ弱くなる。せっかく戦いで経験を積んで強くなってもまた鍛え直しの面倒くささもあったし、全員同時に『転職活動』なんかしたら大変なのも事実だぞ」 「そうだ!そうだ!お前はふんぞり返ってるだけだろ!?こっちは大変なんだよ!やっぱこいつとは無理だわ!」 「ふっ、貴様らも所詮はそこまでか。くだらぬ(こいつら…、気付けよ。短期間で成長できるように気を使ってるのに)」 「うーん、確かにそこまで言われると。『転職活動』頑張ってみるか?『とてつもない力を持つもの』を迎え撃つにはもっと強くならないといけないみたいだしな」  長い間、魔王として君臨してきたが数千年ぶりに普段とは異なるイラっとを感じる魔王であった。  『とてつもない力を持つもの』がこの世界に現れるまであと少し。
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