テンプレ?

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テンプレ?

 と思ってたら待ってはくれません。いきなり『とてつもない力を持つもの』がこの世界にやってきました。冴えない、モテそうもない、普通の男性が魔王と勇者たちの目の前に現れました。魔王と勇者たちはその男性を見ても最初、「誰だこいつ?変な服装。見たことないなあ。でもパッとしないなあ」と思いました。 「へえー。これが異世界ってやつかあ。で。俺はどんな『チート』で無双すんだ?」  パッとしない、冴えない男性の言葉に反応する。魔王と勇者たち。 「(え?今『チート』で『無双』って言わなかったか?)」 「(言うた言うた!聞いたもん。魔王、お前は耳がええやろ?言うたよな)」 「(確かに。余には確実に聞こえた。このものは『チート』と『無双』と口にしおった)」 「(でもあれじゃね?なんか普通ぽくねえか?確かにこの世界のものとは服装が違うが。この世界も広いじゃん?お前さあ、この世界であんな服とか着るやつがいる村とか知ってる?)」 「(余も知らぬ。あのような服は初めてみる。数千年以上この世界を見てきたが記憶にない)」 「(でも確かに『チート』と『無双』って口にしたんだろ?てことはあの男があの美しい神と名乗っていた女が言ってた『とてつもない力を持つもの』で間違いないんじゃないか?)」 「(ちょっとお前が声かけてみろ)」 「(余が?)」 「(そうだそうだ!てめえが声かけろよ!てめえは魔王だろ?怖いもんないんだろ?)」 「(なにか納得がいかないが…)」 「(納得ぅ?てめえ!てめえは魔王じゃねえのかよ!?やっぱり今日から『セクハラ大魔王』に名前変えろ!この根性なしが!)」 「(ふんっ。貴様らの方こそ臆病者めらが。まあいい。余があのものに話しかけてやろう。おそらくやつが『とてつもない力を持つもの』であろう)」 「(がんばれー)」 「おい、貴様」  何千年もこの世界の頂点として君臨してきた魔王に声を掛けられる転生者。 「あれ?おたく、魔王でしょ?」 「ほう、余を知っておるのか」 「それであっちにいるのが勇者たちでしょ?」 「流石だな…。貴様は何でも知っているようだな。そうだ。貴様が言うように余はこの世界の魔王である。そしてあっちにいるものどもが勇者どもだ」 「へえー。『テンプレ』どおりだー」  え?『テンプレ』?と思う魔王。このものは『とてつもない力を持つもの』で間違いないと確信を持ちつつ、何とか『チート』、『無双』、『俺つえええ』、『ハーレム』、『ざまあ』の意味を聞き出そうと思う魔王。 「今度はこちらが質問する番だ。貴様は『チート』と『無双』との言葉を口にしておったな。それはどんな能力だ?」 「いやあー。それがさー。まだ分かんないんですよー」 「何?貴様は先ほど、確実にその言葉を口にしていたではおらぬか」 「あー。確かに言ったかもですねー。あ、僕もいろいろとお聞きしたいので、皆さんもここに呼んでもらえませんか?」  「このものが『とてつもない力を持つもの』なのか?いや、確かにそうなのであろう。だが、殺気がない。余には分かる。あの『神』と名乗っていた女が言っていたことも嘘だとは思えぬ。ふんっ。気にくわぬ」と思いつつ、「おい!貴様ら!全員集合!」と大きな声で勇者たちを呼ぶ魔王であった。
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