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第三話 突然の病
「ただいま~ってえっ?」
帰宅後、早速江ノ島夫婦のお札を祀る。そして自宅には・・・なぜか九頭龍大神がいる。
「九頭龍様、どうしてここにいるんですか!?」
「言ったはずじゃ。汝の指導に当たるとな。それに、この指導を世にも広げてもらうからな。いいか?」
「や、やります!!」
「よかろう、我の頭は9つある。それぞれ一つ一つの頭ごとに指導を行う。ただ、汝よ、この指導は頭でやるのではない。魂で行うのじゃ」
「魂で行う?」
「そうじゃ、頭で覚えていても、体で実行していなければ、何も得られん。この指導は、魂を使い、体で覚えるものじゃ。頭は決して使うなよ。余計わからなくなるからな」
「はい」
「あと、この指導は汝が龍だった頃を思い出してもらう内容じゃが、これは他人にも通用する。この指導を受け、すべて魂で実行することによって、誰でも思い通りの生き方を手に入れることができる。汝はこの指導を世に伝えるために龍から人になって生まれてきたんだからな。この使命を果たすまでは、汝を元に戻すことはできん。人になった以上、使命を果たすまで思う存分に体を使いたまえ」
「了解しました」
「よかろう、ならば早速始めさせてもらおう」
「えっと、夜遅いし、もう寝る時間だよ。明日は仕事なんだが・・・うっ!」
「ま、明日から仕事に行こうとしても、そんな身体じゃもう精神的にもたんじゃろう。今の仕事はもうやめたまえ」
「そんな、ここで仕事を辞めたら、収入が無くなるんですよ。どうやって生活するんですか?」
「心配いらん。これまで多くの龍を育ててきては多くの龍から報告をもらっている。我の指導は、人の指導に当たった龍からのデータをもとに作ったものだ。だから、どんな状況だろうが汝を絶対に幸せへと導いてやる。いや、絶対に龍の姿へと戻してやる。いいか?」
「はい」
どんな指導だろう?9つの頭ごとに指導が変わるというから、なんか楽しみだ。
翌朝。
目が覚めたのはいいが、もう就業時刻の15分前だった。
・・・・・!?
あれ?体が全然動かない!!
どうして?え?ヤバイ!!
なんか、会社に行きたくないな。
もうあれだけひどい残業で精神力が尽きたのか・・・
金曜日もひどいこと言われたし、もうやってられんな・・・
電話が鳴り響くが、出る気が起きない・・・
これはもしかして?
「起きたか?言っただろ。もう仕事はやめてもらうって」
「そんな・・・うつ病を患ってしまうだなんて・・・」
「うつ病だと?トーシャの魂は普通の人とは違いかなりハイレベルだからな。だからレベルの低い連中と切り離さんと指導ができん」
「そこまでしなくても・・・」
「まぁ現状納得はいかんだろう。今の状態を受け入れるには時間がかかるかもしれん。だが、事実を受け止めない限り汝の成長は見込めん」
「・・・・・わかったよ。この状況からどう立ち直るかを考える必要があるんだな」
「考える必要はない。我の指導に従うだけで、思い通りの生き方ができると言ったはずじゃ。信用しておらんのかね?」
「九頭龍様・・・俺は信じているよ」
「ならば、指導に従いたまえ」
「はい・・・」
無断欠勤とは社会人としては絶対にやってはいけない行為だが、今はそれどころじゃなかった。
完全にうつ状態になっていた・・・
こんな状態なのに、九頭龍様の指導が始まるとは予想外だった。
「・・・てあれ?クオーレはどこ行った?」
目覚めたらクオーレの姿がない。
「大丈夫だ。クオーレなら、戸隠で一休みしておる。どうやら神遊びしすぎて疲れてしまったようだからな。ま、疲れが取れたらすぐ戻ってくるから安心したまえ」
「はぁ・・・なんで勝手なことを・・・」
一ノ頭 全力でふざけろ
「では始めよう」
「お願いします。九頭龍様」
数多くの龍を守る九頭龍大神の直接指導がはじまった。
「汝はこの身を纏ってからどれくらい経つのかね?」
「もう25年目だよ。でも龍と人との時間軸が異なるから、九頭龍様からすれば1ヶ月程度の出来事じゃないかな?」
「そうか・・・その期間、どれだけふざけることができたかね?」
「ふ、ふざけるってどういうことだ!?」
「ほう・・・汝は真面目だったのか・・・」
「そうだよ。真面目で何が悪い?」
「では、うつ病になる人の特徴っていうのはどんなものが挙げられるかね?」
「えっと・・・確か、真面目な人ほどうつ病になりやすい傾向があるのだったかな?」
「そうじゃ。汝も固い風潮に巻き込まれてしまったようじゃなぁ。あれだけ自由を極めるとか言って全力でおふざけしていた老龍だったのに、どうして逆のことをしておる?」
「それは・・・社会人として生き残るためです」
「ほう・・・では聞こう。社会人としてというのは、誰のことを指すのかね?」
「・・・・・」
「どうした?」
「誰かは、わかりません」
「答えが出ないということは、的を射抜かれた証拠だな」
「・・・ごめんなさい。周りの目線がすごく気になりすぎていて、一体自分が何者なのかというのを全然考えたことがありませんでした」
「素直でよろしい。これから大事なことを話すぞ。記録をとりたまえ」
「はい」
「これはごく最近のことでな。龍の背に乗る民の気質が大幅に変わったのじゃ」
「そもそも龍の背に乗る民って?」
「汝もその一人、簡単にいうと日本人のことじゃよ」
「なんだ。最初からそう言ってくれたらいいのに」
「なに?龍神界からしたら日本人のことを龍の背に乗る民というのが普通じゃよ。汝も含め、この民は本当に特別な存在なのじゃよ」
「え?特別な民だったのか・・・だけど、気質が変わったというのはどういうことでしょうか?」
「実は、ほんの少し前まで、強いていうなら江戸時代までの民は本当に面白い連中が多かったのじゃ。だが現代を見ると、とても表情が硬い民が増え続けているのじゃ」
「そういえば、日本人って、結構真面目な人が多い気がする・・・」
「だろ?真面目な奴ほど、ガッチガチに硬くて面白くないのじゃよ。それどころか、無駄に自分を責めたり、いらぬ責任を負って自分を潰したりする奴が急増しておる」
「なるほど・・・だから今の日本はストレス社会って言われているのか。だから精神的に疲労が増して、鬱を発症したり、パニック障害を起こしたり、最悪自殺してしまうという原因は真面目な気質からきているのか・・・だから俺もこんな状態になってしまったのね」
「そうじゃ」
「では、こんな状態になってしまったけど、一番効く処方箋はなんでしょうか?」
「簡単だ。汝が子供だった頃に戻ればいい」
「子供に?もう大人になったけど、どうやって戻るの?」
「思い出すだけで十分じゃ。汝はどうだったかね?」
可能な限り思い出してみる。
「うーん、確か、よく忘れ物をしていたし、宿題なんか全然やってなかったなぁ。あと、ピアノはよく弾いていたし、音楽の成績は断トツだったよ。それと、自転車で遠いところまでよく走っていたな~。それくらいかな?」
「ほう・・・結構遊び盛りだったのだな。人になっても、老龍らしい生き方をしておるのは変わらないか・・・」
「そうね。昔はかなり遊んでいたよ。真面目とかじゃなく、結構ふざけていた様子だったかな」
「そうじゃ。汝は我の側近でありなからかなりふざけておった。が、悪ふざけではなく、民を笑わせたり、盛り上げるためにわざとふざけておったりしたのじゃよ。こうして多くの神様を喜ばせておったのじゃよ」
「ということは・・・」
「これからは、真面目さを捨てて子供のように全力でふざけるのじゃ。ただし、悪ふざけじゃなくて、面白いふざけ方をするのじゃ」
「全力でふざける・・・」
「これはな、多くの神様が言っていることなのじゃよ。みんな気の緩みが欲しいと」
「なんか、わかる気がします。ガチガチに緊張していると、思う存分力を発揮できないですね。ピアノの演奏会で何度も同じ状況に遭遇してきましたからその気持ちはわかります」
「人を楽しませる、笑わせるふざけ方ができる奴は、どこ行っても通用するのじゃ。それを今からやってもらおうかね?」
「わかりました。やってみましょう」
「向精神薬と診断書を出しておきます。また定期的な通院をお願いします」
かかりつけの精神科医から診断書をもらい、会社に提出した。
これで長期休養を取ることになった。
傷病手当金の申請を出し、療養生活が始まった。
「はぁ・・・どうしようか・・・」
クオーレはまだ戻ってこない。いるのは自分だけた。
九頭龍大神の指導は偉大なものかと思ったら、全然違うものだった。しかし、九頭龍大神が最後に言ったこと。それは・・・
「わからなくてもやるのじゃ」
というものだった。
とにかく、最初の指導が全力でふざけろということで、長期休養中にふざけながら生活をしてみることにした。
すると、不思議なことに、ある変化が起こった。
まず、仕事について考えなくていいことに気が付いた。
独身であるため、家事もしなければならなかったが、これも少しだけ手を抜いてみた。
なんだろう・・・段々軽くなってきた感じがする。
おふざけ感覚で、産土神のいる挙母神社に行ったり、熱田神宮まで行ったり、八百富神社まで行ったりなど、真面目さを捨ててみると意外と面白い。無計画で神社へ参拝するもの楽しい。
こうして参拝するうちに、神様からのお助けが来た。
全力でふざけながら社会福祉協議会、障害者就労支援センターにSOSを出したところ、なんとすんなりと協力を得られた。
これは・・・九頭龍大神の指導が効いたぞ!
「では、本当に俊幸さんがやりたいことに対して全力でサポートします。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
こうして、いい感じで物事が進んできた。
あとは、鬱状態からどう立ち直るか・・・
3月に入り、気になっていた神社が関東にあったので、無計画弾丸巡礼を行
った。
目的となる神社は、神田明神、荏原神社、金吾龍神社東京分祀、田無神社、三峰神社の5社。
桃の節句、弾丸で東京へ。実は、SNSである神社の公式アカウントから「いいね」が頻繁に届いていたので、それに応える形で行くと決めた。きっとここの神様から呼ばれているのだろう。
クオーレがいないので、寂しい思いをしながらも東京へ自動車を走らせる。
運転中に、不安要素が余儀なく走ってきた。
それは、今後の収入だった。
うつ病と診断を受け、長期休養の影響で今月以降がまともに生活できるのかがわからなかった。
今は傷病手当金が入ってくるとはいえ、給料の3分の2しか入ってこない。
こうした不安要素を抱えたまま参拝することになった。神頼みもいいところである。
最初に着いたのは、神田明神こと、神田神社。
ここの御祭神は少彦名命、大国主命、そして日本三大怨霊のひとつ、平将門が祀られている。
江戸の総鎮守として親しまれているが、なんとアニメとコラボしたり、インターネットやデジタルといったものを守ったりなど、ここの神様はかなり現代社会と調和を図っていたりしてなかなか面白い。
初めて訪れたのだが、最初の印象はこんな感じだった。
「この神社、なかなか面白いな。とあるアニメとコラボしたりしていたとか、情報漏洩防止御守があるのか・・・」
東京都はとにかく有料駐車場が多いが、ここは参拝者に限り無料で駐車できる。
天気は若干の雨が降る。春に突入したとはいえ、まだまだ寒い日が続く。
お清めを済ませて、拝殿へ向かう。
「愛知県豊田市から来ました。林 俊幸です。神田明神様、この度はお会いできたことに、大変感謝いたします。私は今、うつ病を発症していて、長期休養中です。これからどのように動いたら治るのか教えてください。お願いします」
かなりガチガチになっていた。これでは九頭龍大神の指導の意味が・・・
神田明神の答えはというと・・・
「そんなに力を入れたら余計悪化するぞ。もっと脱力して。心にゆとりを持たせるといいよ。変に真面目な人はつまらないし、面白くない。子供のように遊ぶ感覚で神社に行きなさい」
やっぱりそうだった。
鬱を発症して以降、参拝がぎこちない状態が続いていた。というか、かなり焦っていた。
「あっ、やっぱり見抜かれていたのか。ごめんなさい・・・」
素直に謝ると、神田明神が力の抜き方を教えてくれた。
「力の抜き方を教えてやろうか?」
「お願いします」
「まず、隙間を作ることが大事だ」
「隙間・・・?」
「そうだ。まずは深呼吸をするのだ。はい、吸って~」
言われるがまま、神田明神から脱力方法を教わる。
まずは深呼吸をする。
繰り返していくうちに、だんだんと力が抜けていく。
「その調子だ。もっと腹を使え」
「(ふぅぅぅぅぅぅ)」
「いいぞ。だいぶ力が抜けてきたな」
「(すうぅぅぅぅぅ)」
神田明神から深呼吸の指導を受け続ける。
「そうだ、吸って吐く一瞬の間に注目しなさい」
「一瞬の間・・・」
「呼吸の途中で一瞬の『隙間』ができる。ここに意識を向けると、簡単に力が抜けるぞ」
神田明神に教わった通り、呼吸に一瞬できる隙間に意識を向ける。すると、不思議なことに、だんだんと力が抜けてくる。
「すごい・・・ここまで脱力できるなんて!!」
「これが神田明神流脱力呼吸法だ。こうすることで、ストレスがたまったときやイライラしているときにこうした呼吸をすると、簡単にイライラが消える。この呼吸法を日常生活で生かしてくれ」
「ありがとうございます」
神田明神から呼吸法を教わった。
神田明神に感謝し、次の神社へ。
向かった先は荏原神社。
ここの御祭神は高龗で、品川宿の近くを守っており、周辺の住民からは「品川の龍神様」として親しまれている。
到着したときには雨が降っていた。傘は・・・いらないか。
東京都内かつ土曜日だというのに、参拝客はおらず、かなり閑静な空気が漂う。
お清めを済ませて、あいさつする。
「この前は貴船で大変お世話になりました」
すると・・・
「あれ?トーシャ、金龍はどこいったの?」
どうやらクオーレがいないことに気が付いていた。
「あぁ、アイツなら戸隠神社で寝ているよ。弾丸参拝と江ノ島夫婦への御祈祷で遊び疲れてしまったようで・・・」
「そうか・・・この前はありがとう。龍神だった時の記憶は取り戻せそう?」
高龗様からの質問だ。
「う~ん、まだ時間がかかりそう」
「そう・・・じゃ、時間はかかってもいいから取り戻して」
高龗様から応援をいただいた・・・気がした。
参拝を終えて、御朱印をいただいた時には、雨はすっかり止んでいた。
これは、もしかして神様からの歓迎サインだったのかな?
軽く昼食をとり、次に向かう神社は金吾龍神社東京分祀。
金吾龍神社は、本社が北海道小樽市にあるが、2018年の台風10号が北海道に上陸したことにより被災。本殿は現在も復興に向けて建設を進めているが、復興支援してくれる人を増やしたいという宮司の意向によって、東京に分祀ができた。
この神社はまさに異質を極める。
まず、日本で唯一、マンションの一室に鎮座していること。都内の狭い路地に建つマンションの中にある時点で参拝客は間違いなく驚くだろう。
次に、ここでは授与品がなによりも豪華であること。月替わりの限定御朱印はもちろんのこと、御朱印帳は非常に高級感が溢れるものとなっており、一度は入手してみたいものである。お値段はほかの神社と比べるとかなり高いが、それでも値段以上の高級感がある。
それだけではなく、飛び出す御朱印やすかし御朱印、繋げて伸びる御朱印など、おそらく唯一といえる変わった御朱印がいただける。
最後に、どこにいても授与品を受け取ることができること。なんと、この神社にはWEB授与所があり、インターネット上からオンラインショッピング形式で受け取ることができる。遠方で参拝に来られない人に向けたサービスをしている神社はどこ行ってもここしかない。
そんな異質を極めた神社に訪問するのだが、神事が行われている可能性があったため、一度参拝できるか電話を入れることにした。
すると、宮司さんから「お待ちしております」との一報をいただいたので、早速自動車を走らせ、近くのコインパーキングに駐車した。
「すごいところにあるのだな・・・」
入り口で巫女さんに説明をいただく。
「ここでは北海道の龍神様が祀られていますが、摂社にはアラハバキ様、そして国之常立尊が祀られています」
ん?アラハバキ?
アラハバキといえば、東北地方から北海道まで信仰されている、謎だらけの神様であるが、その正体は自分も知らない。
もうひとつ、国之常立尊が出てきた。
これも謎が多い神様ではあるものの、日本の国土を作り、大地を司る神様とされており、一説によると容姿は龍の形をしているようで、日本列島が龍のように見えるのは国之常立尊が永久の眠りについたときの姿だという。
本殿の前へ進む。それにしても狭い・・・
「この度はお会いできて光栄です。大変感謝しております。少額ではありますが、本殿の復興を支援させていただきます。どうかご本殿の完成をお祈りします」
出てきたのは・・・これまた立派な金龍様だった。戸隠で寝ている幼い金龍とは違うが・・・
「ありがとう。君、あの龍と似ているね。十和田にいた龍神とソックリな顔をしているよ」
十和田って青森県の・・・?
「え?そうなの?」
「うん。洞爺湖近くの火山が爆発したとき、いつも十和田から来て誰かを救っていた龍神とソックリだよ。もしかして、龍から人に生まれ変わったの?」
「それが、そうかもしれない。九頭龍大神から言われただけだが、まだ確信は持てないよ」
「へぇ~、そのうち思い出すかもしれないね、あっ、もうすぐ神事が始まる!!ありがとう」
「こちらこそ」
こうして本殿を後にして、授与所で御朱印をいただく。
待機所で巫女さんと話をした。
「ずっとSNSで『いいね』が飛んできたので思わず来てしまいました」
「そうなのですか、ありがとうございます♪」
見た目は異質ではあるが、中身は豪華な神社だった。ここにはもう来られないかもしれないし、次行くとしたら復旧後の本社になるかもしれない・・・
順調に進み、田無神社へ。
田無神社は、黒龍、白龍、青龍、紅龍、金龍を中心に祀られている。
東京の龍神と言えば、田無神社が一番有名かもしれない。
東京都心から下道を走ること40分、到着前にまたしても冷たい雨が降り出す。なんか、龍神様と会う前は雨が降るのかな?
昼下がりになり、参拝者駐車場に自動車を止める。
裏参道から入り、手水で清めてから拝殿に向かう。境内には池があり、いかにも龍がいそうな雰囲気が漂っていた。
拝殿に立ち、五龍に挨拶をする。
「この度は、遠方からお呼びいただきまして、誠にありがとうございます」
五龍の反応はというと・・・
「首都圏守りし厄災を跳ね除ける、その名も・・・」
「ちょ、なにが起こっているの・・・?」
「ドラゴンレッド!」
「ドラゴンブルー!」
「ドラゴンホワイト!」
「ドラゴンブラック!」
「ドラゴンゴールド!」
「五柱揃って~」
「龍神戦隊!ドラゴンレンジャー!!!」
「・・・・・」
何これ?どんな反応をすればいいの?
「全然ウケなかった・・・黒龍、どう責任を取るんだ!」
「いや、どうもこうも紅龍がダサい企画を持ち込んだことが原因だろ」
「ちょっと、喧嘩はやめなさい紅龍と黒龍!まだ改善の余地がありますよ」
「金龍は黙ってなさい」
なんか、争いが始まった。
「あのぉ、何をしているの?」
「ハッ!!」
「あ、参拝者が来ていたのか。ごめん・・・」
演技にはドン引きしたが、色違いの龍からそれぞれ教わった。
青龍からは「回復には時間をかけて」と言われ、紅龍からは「健康であれば何でもできる」とのアドバイスをもらった。
一方で、白龍は「龍みたいな体をしているね」と、黒龍からは「目つきがほかの人と違う」と言ってきた。
金龍は「龍の魂を抱えた状態でよく人間として生きているね。すごいことだよ」と励ましてくれた。
こうして田無神社の五龍とお話ができたので、最後に三峰神社へと向かう。
最後の三峰神社は、埼玉県秩父市にある。
かなり離れているので、高速道路と有料道路を使い、ナビに従いながら1時間半走る。到着時刻は16時半を示していたので、かなりギリギリだった。
三峰神社に近づくにつれて、雨から雪に変わっていく。3月に入ったのに、まだ積雪が目立っていた。
山頂駐車場に到着。自動車を降りるとかなり寒かった。
三峰神社の御祭神は伊弉諾尊と伊邪那美尊を中心に、造化三神である天ノ御中主、高皇産霊神、神皇産霊神、そして最高神である天照大神が祀られている。
あら?ここに自分の産土神がいるのか・・・
少しだけ、由緒書きに目を通す。
「日本武尊が碓氷峠に行く途中で建造し、祀ったのか。こんな山奥なのに、よく建造できたな~」
と正直な感想が出てきた。
地面が凍結しているため、足元に注意しながら本殿へ進む。
お清めをするのだが、手水の代わりに祓串が置かれていた。これは凍結防止のためであると書かれていた。
祓串を使う際の作法が書かれていたので、指示通りに行う。
“取る前に一礼をし、左手を上に、右手を下にして持ち、目線よりも少し上の位置に構えて、左、右、左と振る。元の位置に戻して、一礼をする”
「こういうことか・・・なるほどね」
祓串の使い方を覚え、拝殿に向かう。
「この度はお導きいただきまして、ありがとうございます」
もう時間がない。日がかなり落ちてきた。
門が閉まる直前に何かが聞こえた。
「トシユキさん、どうか恩恵を受け取って・・・」
「え?何かもらえるのですか?」
「・・・・・」
閉まってしまった・・・
何の恩恵を受け取ってほしいのかがわからなかった。が、何かを受け取ったような感じがする・・・
こうして関東の5社を巡り、帰路についた。
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