1人が本棚に入れています
本棚に追加
※▽××◎◇×※
あなた。
そう、いまこれを読んでいる、あなた。
今回の超短編グランプリ、審査担当の、あなた。
いまは、昼ですか?
それとも、夜?
場所は、オフィス?
それとも、ご時勢がら、リモートワークで、自宅リビング?
家では集中できないので、近所のファミレスかも知れません。
あるいは、カラオケボックス。近頃ではリモートワーク用のコースもあるそうですから。
オフィスやファミレスなら、周りに人がいる。
自宅やカラオケボックスなら、一人きり。
でも、人がいてもいなくても、小説を読むのは孤独な作業です。
毎回毎回、気が遠くなるほどたくさんの応募作が集まり、そのすべてに目を通すのが、あなたの仕事。
眼精疲労の目に、目薬など差しながら、画面をスクロールしてひたすら物語を追う。
傍らにはコーヒー。もしかすると、スタミナドリンク。
刻々と時を刻む壁の掛け時計。
しかも、ただ読むだけではなく、評価をしなければなりません。
超短編グランプリの最高峰、漱石賞(賞品はネコのキーホルダー)には、どの小説が相応しいか?
第二位の、龍之介賞(賞品は河童のワッペン)には?
第三位の、鴎外賞(賞品は舞姫スタンプ)には?
ところで余談ですが、藤村賞を設けて、家を賞品にするというのはどうでしょう。私、そろそろぼろアパートから脱却して、一戸建てに住みたいのですが。
いえ、冗談です。そんなことをしたら、御社はすぐ潰れてしまうでしょうね。
閑話休題。
もちろん小説が好きで、あなたはこの仕事を選んだことでしょう。
しかし、いくら好きでも、ものには限度がある。
時にはもう、小説なんて、一行も読みたくない、と思う日もあるはず。
あなたが勤める小説投稿サイト運営会社は、ブラック企業ではないと信じますが、だからと言って働き方改革が進んでいるかどうかは別の問題。
深夜残業して読まなければ終わらない、などという日もあるでしょう。
その時、血沸き肉躍る作品で、快調に読み進められるならまだしも。
そうでなかった場合。
文章がぎこちなく、中身もさほど面白くない。
自己顕示欲の塊で、何も共感するところがない。
登場人物のキャラも、オチのアイデアも、似たようなものを山ほど読まされている(まあ、お題が決まっている以上、ある程度仕方がないにせよ)。
そんな応募作が続いたら、いくら小説愛に満ちていても、うんざりすると思います。
あ、この小説がまさにそうだと?
だとしたら……
とにかく、せめて先を急いで、少しでも早く終わらせましょう。
最初のコメントを投稿しよう!