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◇×※※▽××◎
夕刻。
決意も新たに出直した私は、都立桜田高校正門向かいの喫茶店で、下校する豪田直を待ちました。
黄昏は既に濃く、やがてとっぷりと日も暮れた頃。
彼女は門から出て来ました。
桜田門から出て来たのです。
一人でした。
街灯が照らす道を歩く、直。
その後を尾ける、私。
住宅街によくある、エアポケットのような公園の脇。
そこへ差し掛かる、直。
ふっと、途絶える人通り。
私は、駆け寄る。
直が、振り向く。
その、見開かれた瞳、わななく唇。
公園へ強引に連れ込む、私。
恐怖に竦んで、声も出ない、直。
木下闇で縺れる、二人。
「天誅!」
桜貝のような耳たぶに囁いた時、セーラー服とスカートの隙間から覗いた肌の白さが、目に染みました。
そこに滑り込んだ、我が手のナイフ。
視野を、真っ赤な血の迸りが埋めた瞬間、私の記憶は消し飛んでいました。
気づいた時には、朝になっていました。
習慣的にテレビをつけると、ニュースで、都立桜田高校三年、豪田直(17)が刺殺されたと報じられていました。
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