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 夕刻。  決意も新たに出直した私は、都立桜田高校正門向かいの喫茶店で、下校する豪田直を待ちました。  黄昏は既に濃く、やがてとっぷりと日も暮れた頃。  彼女は門から出て来ました。  桜田門から出て来たのです。  一人でした。  街灯が照らす道を歩く、直。  その後を尾ける、私。  住宅街によくある、エアポケットのような公園の脇。  そこへ差し掛かる、直。  ふっと、途絶える人通り。  私は、駆け寄る。  直が、振り向く。  その、見開かれた瞳、わななく唇。  公園へ強引に連れ込む、私。  恐怖に竦んで、声も出ない、直。  木下闇で縺れる、二人。 「天誅!」  桜貝のような耳たぶに囁いた時、セーラー服とスカートの隙間から覗いた肌の白さが、目に染みました。  そこに滑り込んだ、我が手のナイフ。  視野を、真っ赤な血の迸りが埋めた瞬間、私の記憶は消し飛んでいました。  気づいた時には、朝になっていました。  習慣的にテレビをつけると、ニュースで、都立桜田高校三年、豪田直(17)が刺殺されたと報じられていました。
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