楽園の地

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僕は中学、高校と暇さえあれば発掘調査のボランティアで手伝いをして来た。 何故か多くの物を掘り当ててスタッフに不思議がられた。 その辺りの地形も頭に入り地図無しでも歩き回れるし、何かの遺構があると思う場所のリストを作っていった。 西側には遠浅の海。 東側には火山帯を含む500m~700mの連なる山脈。 自然に作られた要塞に囲まれてはいるが、宮殿周りのお濠跡を詳しく調査すると当時の土木建築技術はかなり高度なものと考えられている。 それから大学の考古学部に入り全国の様々な発掘現場に立ち会って来たが、殆どこのイザナル文明の影響を受けている事が分かっている。 だから多くの技術を発明したイザナルは、惜しみなく近隣国にそれを伝えこの国の繁栄をもたらしてくれたのだと思う。 そして今回 発掘調査している遺構跡で新たな石室が発見され第2墳墓と命名された。 第1墳墓と同じように多くの金製装飾品など見つかったが、被葬者の分析から非常に珍しい男女の合葬である事が分かった。 しかも住居跡だと思われていた遺構はこの2人の被葬者の神殿である可能性が出て来た。 そしてこの2人は50歳代男性と40歳代女性とみられた。 それまでこの国では自然崇拝を主としてシンボル的石像や巨石などを対象としていたと考えられていたが、この発見で人間に対する崇拝が行われ、しかもシンボリックな神殿を構えた事はこの地域だけではなく多くの場所から崇拝者が集まって来たのではないかと考えられた。 しかし全く証拠はなく石室内壁に刻まれた文言や壁画に描かれた事象の解読を待つしかなかった。 このイザナル時代については我が国での詳しい資料の発見はなく、多くは大陸で発見された物を参考している為、未だに多くの謎に包まれている。 それでも僕は500年続いたとされるこのイザナルの文明が熟成して多くの民が幸せな生活を謳歌していた楽園の地だったと思いを馳せている。
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