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小さき姫
そんな時だった。
僕は新しく発見された石室内壁の文言や壁画を写真に収めていた。
すると一眼レフのフラシュに合わせるように音が聞こえた気がした。
撮影を止めて耳を澄ませてみたが特に何も聞こえなかった。
フラッシュ音の反響かなと思い その時は気にもせず帰った。
家で画像を確認していると1枚の写真に釘付けになった。
それは石室の隅っこに横たわる人のような物が写っていたからだ。
僕はその部分を拡大して確認すると赤い作務衣のような服をまとい長い黒髪の人物である様に見えた。しかし顔はブレてしまって分からなかった。
背景の壁画の色や線はクリアに写っているので手ブレではない筈で、そうなると顔の部分が動いていたとしか考えられなかった。
壁画との比率で割り出すとその人物は5cm程しかなく、とても人ではあり得ないと思い明日にでも研究室でスタッフと検証しようと思った。
ところが...
翌日 研究室でデータを開くと目を疑った。
その人物は消えて失くなっていた。
全ての画像を何度もチェックしたがあの人物は消滅していた。
皆んなから誂われたが、間違いなく昨夜はそこに居たのだ。
僕は狐につままれた思いでどうしても納得出来ず、もう1度墳墓へ撮影しに行く事にした。
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