レジナルド・カールトンの生涯研究

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 彼、門倉の目は深くてほの暗い洞窟の入り口のようだった。 自分の子と人間のとを取り替えてしまう妖精の棲み処、深いふかい洞穴を俺は思った。 『チェンジリング』とは本来、そうして妖精に取り替えられてしまった子供のことを指し示した。  性衝動の熱に浮かされぼんやりとする彼の姿は、妖精にさらわれて連れ去られてしまった人間の子供のようだった。 それとも、身代わりにと置いていかれてしまった妖精の子供か。  どちらにしても何と可哀そうで――、なんて可愛らしいんだろう‼ 俺は本気でそう思った、思わされた。  しょせん「孕ませる側は制御(コントロール)が効く」などといっても、高が知れている。 鼻の先がこすれ合いそうなほどに顔を、体を接しているというのにΩの発情に()てられない者など存在しない。  俺も又、例外ではなかった。 ほとんど抵抗らしいていこうも示さない、いや、しめせなかった門倉の体を引きずっていく。  そうして、見た目だけはなるべく普通の寝台(ベッド)へと近付けてある実験台の上へと放り投げた。 驚くほどに軽くて、――容易(たやす)かった。
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