『赤い雄鶏』

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 俺がそんなことを考えている内に門倉の顔が近付いてきた。 下ろされた目蓋の縁でまつ毛が細かく震えている。 長くはないが、黒くて濃い。 随分ときつく目を閉じているらしかった。  門倉の口は、舌を覗かせる最小限程度にしか開かれていなかった。 しかしそこから目一杯に伸ばしてきていた。 その舌も又、目蓋と同じく小刻みに震えていた。  門倉がどれ程器用であったとしても、あの小さな薬の欠けらを舌先でさらったりすくい取ることまでは出来ないはずだった。 錠剤を確実に摂取するためには、俺の舌を自分の口の中へと引き込まなければならない。 ――つまりは俺に口付けなければならなかった。  俺は門倉を試していた。 門倉が本気で抑制剤を欲しているのかを見極めたかった。  断言してもいい。 ヒートに煽られるままに交合(セックス)に至ってしまった方がずっと楽だった。 何よりも、それが『自然』だった。  それに逆らいまでして一体、話したいというのだろうか? その内容はもちろんのこと、おれは何が門倉にそこまでさせるのかをも知りたかった。  果たして、門倉はそうした。 どの道それしか方法がないのだから、おそらくは致し方なくだったのだろう。 首を頭を上げ、俺の舌へと自分のをおずおずと絡めてきた。
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