『赤い雄鶏』

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 その後は、まるで蛇が獲物を自分の棲み処の穴倉へと引きずり込むかのような素早い動作だった。 多分、薬をこぼさないようにと必死だったのだと思う。  門倉は俺の舌に乗っていた『赤い雄鶏(ローテ―ハン)』をすっかりと舐め取った。 唾液に溶けてしまった分までをも余すことなく取り込もうというのだろうか? 一度だけだったが、口の中をきつく吸い上げられた。  その後すぐに門倉の顔は、唇は俺から離れていこうとした。 ――目的のはもう手に入れた。とばかりに 『行き掛けの駄賃』という言葉があるが、今の俺の場合は『逃げ得は許さない』という方が相応しかった。 俺はけして、食べられっ放しの野ネズミなどではなかった――。  門倉の後頭部を片手で掴んで、引き寄せた。 驚いた門倉が目を一瞬見開いたが、又すぐにつぶってしまった。 俺はそれを確認すると、一転逃げ出そうとした門倉の舌を捕らえた。  それは難なく捕まえることが出来た。 すぐさまに溶けて崩れて、今にも形を無くしてしまいそうだった。 それ程までに熱くて柔らかい舌だった。  俺はその小さな肉のかたまりを思うがままに(もてあそ)んだ。 抑制剤への対価のつもりだった。
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