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頭頂部へと走った微弱電流が、おれに撤退指示を出してくる。
これ以上続けると本当に蛇の巣穴へと引き込まれてしまいそうだった。
いや、妖精が棲むという丘の穴の中奥深くへと――。
俺はそう思いながら、門倉から離れた。
後頭部の支えていた手も退ける。
その途端に彼の頭は枕に、肩から背中にかけては実験台へとそれぞれ同時に叩き付けられた。
「・・・・・・」
おそらく門倉は全く痛みを感じなかっただろう。
今は性衝動を満たせない苦しさの方がずっと強く勝っているはずだった。
おれはそう理解していても何故か、痛いたしいと思ってしまった。
乱れて、無造作に額にかかった前髪を詫びる代わりにそっと払ってやった。
青みがかって見えるほどに黒い髪の毛は、しっとりと柔らかかった。
しばらくの間は、――計測していて5分ほどは門倉の荒い息づかいが実験台の周りに響いていた。
やがて呼吸を整え終えた門倉はゆっくりと目を開けた。
しかし顔の、頬の紅潮は未だに引いていない。
元もとの地肌の色がけして濃くないからだろう。
さすがに静脈が透けるほどに白くはないが、門倉はきめの細かい滑らかな肌をしていた。
それ故になのだろうか?
赤らんでいる様がやけに目に付いた。
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