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『東の血』
おそらく門倉は、その姓名が表すように『東の血』の流れを汲むのだろう。
かつて七大国が在ったこのアポカリプシス大陸の、遥か東から流れてきたという民族の血統をそう称した。
『女の中のおんな』と呼ばれる、妊娠出産に特化したΩが多くいたという。
これは未だに伝承の域を出ていないのだが、『東の血』のΩは今のこのアポカリプシスでかろうじて生き延びているΩの祖、――つまりは起源だという説がある。
Ωを介して、『東の血』はアポカリプシスへと浸透した。
百年ほど前から問題視されるようになった極端な少子化の波は、先ずその『東の血』のΩへと襲いかかり容赦なく飲み込んだ。
Ωの発情が起こる頻度が激減し、結果、妊娠件数も比例して減少した。
αは生殖機能を有しているが胎盤が未発達なために、孕むよりも孕ませる方に適していた。
α同士の交配の際には、胎盤が耐えうる限界の妊娠8週目に胎児を取り出す。
以降は『育児嚢』と呼ばれる装置で、人工培養が行われた。
――これが今現在の一般的な『出産』方法だった。
そうしてやっと産まれてきた子供たちの大半、約八割はβ種だった。
βは変異体以外に生殖機能自体が確認されていない。
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