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「おい誠也、どうしたんだよ」
急に教室へ戻った誠也を追ってきた彰人が声をかけてくる。
彰人が可愛い女子に話しかけることよりも、自分に付いてくることを選ぶなんて珍しいことだ。
何か勘づかれている気がしてならないと、誠也は思った。
「いやぁ、現代文の教科書ちゃんと持ってきてたかなぁ?て」
不自然に机や鞄の中を漁る誠也を見て彰人はジト目で首を傾げる。
「おいっ、可愛かったな。転校生」
「……。そうか?」
誠也はやっと現代文の教科書を見つけると、それを開きながら答えた。
「あぁ? なんか変じゃね?おまえ。次の授業の教科書なんかいつも開けて待たねーだろ。 まさか、あの子に一目惚れしちまったんじゃねーだろーなぁ」
「は? ちげーよっ!」
(……んなわけないだろ。あいつが今日から一緒に住む相手だって、速攻周りにバレたくないんだよ。特におまえにはなっ! )
あまり目を合わせようとしない誠也をどこか訝しげに見つめる彰人だったが、他の友人に今日のカラオケの話題を振られてそちらへ流れていった。
(……ったく、オカン! わざわざ転校してくるなんて、聞いてねーんだよ)
机の上に突っ伏せて心の中で叫ぶ誠也。
彼は、これからの学校生活がとても不安になった。
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