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「おっ誠也、今日カラオケいかね? 」
学校に着くと、クラスの中で一番仲のいい狭山彰人が声をかけてきた。
彼は人懐っこくて女好きで、イケメンだ。明るめの茶色い髪に襟元に付くくらいの長髪のいかにもチャラそうな容姿。おまけに顔が広く、他校の友達も多いので、いつもカラオケや合コンを主催している。
元カノとも、彼が開いてくれた合コンで知り合った。
きっと彼女と別れたばかりの誠也を思って誘ってくれたのだろうが、誠也は、もう恋人はこりごりだし、同居の準備もあるので断ろうと思っていた。
「あー、悪い。今日は俺いいわ」
「えー、マジか。今日バイトだっけ? 」
「いや、今日は違うけど、なんていうか、色々忙しくて」
「そっか。残念。何かあんの?」
「ああ、家のことだよ。親、人使い荒いから」
「そうか。どんまーい」
そう言って、彰人は誠也の肩を叩くと、登校してきたばかりの違う友達に駆け寄って、声をかけていた。
朝から本当に元気なやつ、と思いながら誠也は一限目の準備を始めた。
謎の少女との同居のことは、大声で騒ぎ立てられると思ったので、まだ言わないことにした。
きっとのちにバレるだろうけど、その時はその時だと思った。
昨日の疲れが残っているのか、一限目の化学の授業は眠くて、所々しかノートが取れなかった。
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