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 昼休み、隣のクラスに人だかりができていた。どうやら、転校生が来たようだ。  早く弁当を食べ終えた彰人が、廊下側の窓から身体を乗り出してその様子を見ていた。  「何? 転校生?」  「女子?」  彰人に感化された男子数人も、駆け寄って来て廊下のほうへ出て行く。  「おい、誠也っ。見に行くぞ!」  「いやっ! 俺はいいって」  「ほうら、行くぞ!……可愛いらしい」  「え?」  彰人に手を引っ張られて、人だかりの中へ入っていった誠也は目を丸くした。  (……は? え? )  心の中の声が出てしまった気がして、さっと周りを見回したが大丈夫だったようだ。  誠也の目にはっきりと映った転校生の顔は、昨日母親のスマホで見た写真の少女だった。    注目される中、彼女は恥ずかしそうにするでもなく、自分を繕うでもなく、話しかけてきた初対面の女子たちと、とても自然に接していた。  今日転校してきたとは思えないほどの対応力に驚く誠也。  しかし、昨日母親が言っていた彼女と今の彼女の様子が合わないので、疑問にしか感じない。  その瞬間、彼女が誠也のほうを見て目が合ったので、彼は用事を思い出したようなふりをして咄嗟にその場から離れた。    彼女の名前は、〝如月 茉莉〟と言うらしい。  
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