溢れ出しそうだよ。

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 彼をそっと見れば、彼は涙をこらえていた。本当に、大丈夫だろうか。助けたいのに、何もできない。目の前の友達よ、気づいてあげて欲しい。彼はきっと吐き気をこらえているから。力みながら彼の友達をにらむけど、友達は自分のことを面白おかしく語ることに夢中で、話す相手のことなんか考えてないようだった。  ふと、視線にバスの時計が見えて絶望する。さっきから五分も進んでないじゃないか。もう、何時間もこらえたつもりだったのに。そう思うと、ますます我慢しているのがつらくなり、一秒を示す針の動きさえ目で追ってしまう。意識すれば、するほどだめなのはわかっているのに。  しばらくして、バスガイドさんが渋滞のお知らせを読み上げる。落胆した気持ちに、本気で泣き出しそうになった。誰か、助けて。あたしをここから連れ出して、トイレに連れってって。そう願いを込めて彼を見る。だけど彼もつらそうでそんな願いはきっと届かないのだろう。濡れた下着が肌に張り付いて気持ち悪い。張り付くたびにオシッコ、という言葉があたしの心にネチャリと張り付いて、ますます気持ち悪い。
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