溢れ出しそうだよ。

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 すると、バスが少し動き出す。じわじわ、と前に進んでいく感覚に心が揺れる。やった、すすめ、すすめ。早く、前へ。そしてトイレ休憩に間に合えば、あたしはやっと楽になれる。バスから降りて、歩いて行くのはつらいかもしれない。だけど、お漏らしをしてしまうことを考えればきっと耐えられる。そう思うときが緩みそうになり、あたしは自分に気合いを入れるように右足を左足で踏みつけた。  そのときだった。バスが急ブレーキを踏んだのは。あたしは体に力を入れて、振動に耐える。小さく声を漏らしながらも、なんとかこらえたあたしは涙目になる。そして、彼が車酔いをしている事を思い出し慌てて隣を見る。すると。  彼のグレーのパンツが、無残なぐらいビッチャリと色を変えていたのだった。 END
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