溢れ出しそうだよ。

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 修学旅行。それは高校生にとってお別れの前の最後の思い出。大好きな人のとなりをバスで陣取ることができたあたしは、これから始まるロマンスを楽しみにバスに乗った。……しかし、緊張から水分を取り過ぎて出発してしばらくすると完全にオシッコがしたくなった。あげく渋滞にはまり、トイレ休憩は破滅的に望めない状況である。淡々、と誰にも気づかれない程度に貧乏揺すりをしながらあたしは唇をかむ。隣の想い人はというと、後ろの席の仲良しの男の子と雑談の花を咲かせていた。  外の風景が、あまりにも変わらないので過ぎる時間がさらに長く感じる。だけど、長く感じれば感じるほどに、彼といる時間も長いような錯覚に陥り、頬がほんのり熱くなるのがわかる。落ち着きのない鼓動が、何に対してもだえているのかわからなくなりそう。  オシャレしてきた淡いベージュのスカートを握りしめて、ほんのり火照る気持ちをこらえた。彼の横顔が美しくて、とろけるような気持ちに体の力が抜けそうになる。日焼けした健康的な肌の毛穴を次第に探し出して現実逃避を始めるあたしは変態だと思う。
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