溢れ出しそうだよ。

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 口の中がカラカラに乾いてきて、唾液で湿らせたくなるけれど、これ以上水分をとれば膀胱の中があふれてしまいそうで、気がつけば息が少し荒くなってくる。お願い。誰も気づかないで。そして早くトイレ休憩になって。高校三年生にもなって、お漏らしなんかしたくない。絶対そんなの耐えられない。そう思いながら熱い視線を彼に向けていると目が合った。彼は少し照れくさそうにあたしから目をそらす。どこかせわしなく動く彼の手元に視線をやりながら、あたしも反射的に目をそらした。  彼はどこか上の空で、友達との会話を繰り返す。そんな風にされると、もしかしてあたしのことを意識してくれて、気にしてくれてるのかなって浮かれてしまうからやめて欲しい。どこか潤んだ彼の視線が色っぽい。唇もうるうるに湿っている気がする。彼はどこか何かをこらえるような目で、あちらこちらを見てはため息をついては会話に戻る。そんな仕草が愛おしくて、あたしはいっそ時間が止まれば、と思ってしまう。だが、それは困る。このまま時間が止まればあたしはお漏らしをしてしまう。それは絶対困る。
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