溢れ出しそうだよ。

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 唐突に彼が、悩ましげなため息を漏らす。びくりと体が揺れて、あたしはすごくトキメいてしまう。そのアンニュイな表情に、あたしの動悸は止まらない。ますます時間が無限に思えて、心の奥が苦しくなる。バスのこすれるようなタイヤが進む音さえ、あたしの心を揺らがす。ジン、と熱くなるのは、一体どこだろうか。心臓のリズムがどんどんゆっくりになっていく気がする。彼を見るたび、あたしは彼が好きなのだと再確認する。ねぇ、その悩ましい唇で、あたしに愛をささやいて欲しい。なぜだか耳まで赤い彼を見ていると、あたしは夢心地になる。あたしを見て。そう思うのに絶対今のあたしは見て欲しくないという気持ちが矛盾して、やり場のない感情が生まれた。  彼の笑い声が、子宮に響くのはオシッコを我慢しているせいなのか。  あたしの握りしめた手が、震えている。握りしめた手を目で見つめ、一本二本と数え始めるあたしは、意識しないと彼のこととオシッコのことしか考えられなくなりそうな状態だった。彼のことを考えれば我慢をする力が抜けてしまうし、オシッコのことを考えれば今にもオシッコがあふれてしまいそうで焦る。鈍く繰り返される刺激が、早く楽になりたいとせかす。ジュワリ、と一滴、オシッコが下着を濡らした。それはあたしのあふれた気持ちのようで、その暖かさにぼんやりと気持ちがとろけそうになる。
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