初恋

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「佐野くん」  少し照れたような素振りで言うことによって,嘘だとバレる可能性は低くなる。  本当は佐野くんなんてどーでも良いのに。 「えっ?佐野ぉ…?」 「佐野くんかぁ。まあ,良いんじゃない」  なんだか先ほどよりも冷たい。あっ,そういえば。 「宮沢さんと付き合ってるって本当なの?」  私の言葉が図星だったのかみんなして黙り込む。分かりやすい。 「そっかぁ。じゃあ,失恋かぁ。辛っ」  泣きそうな顔をして言う私にクラスメイトは少し慌てた。 「えっ,でも?噂だし,あんまり気にしなくても大丈夫だと思うよ」 「そうだよ〜。だいたい,恋なんてそんなもんでしょ」 「良くあるよね〜。三角関係とかも」  フォローするのがお上手で。 「やだよ。宮沢さん,可愛いしまあしょうがない」  そう言うと,演技とかでもなんでもなく泣き出してしまった。 「えっ,あ」 「その…ねぇ?大丈夫だって」  なんで,泣き出してしまったんだろう。こんなの私じゃない。
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