プロローグ

3/3
前へ
/217ページ
次へ
◇ 「見つけた」  私は依頼された男を見つけると、を構えた。この職についてから、ずっと使っている愛用のライフルだ。  高そうなコートに鞄。ワックスで前髪を上げた髪。いかにもモテそうといった感じのタイプの男に私は「さようなら」と言うと、引き金を引く。何度もシミュレーションをしたお陰か、見事私が放った弾は男の心臓に的中した。  小さくどさっと男が倒れる音が聞こえる。周りには誰もおらず、誰かが悲鳴を上げることも無かった。私は男が倒れるのを確認すると、ライフルを横に置いて手を合わせる。 「どうか安らかにお眠りください」  そう言い残して、足早に銃を片付けた。  男の斜め前方にある廃ビルの屋上。周りには一つも防犯カメラが無く、おまけに人通りも少ないから殺害するには最適なスポットだった。  屋上を後にすると階段を下りながら、耳につけているハンズフリーの携帯電話のボタンを触る。ピッという電子音が鳴った。私はスーッと息を吸うと、向こうからの応答の声が聞こえて声を発する。 「こちらピエロです。任務を遂行しました」 『ご苦労、もう戻ってきていいぞ』 「了解」  私はもう一度ボタンを押すと、また電子音が鳴って通話が切れた。  階段を全て下り切ると、外に出た瞬間桜の花びらが勢いよく舞った。桜吹雪だ。桃色の花びらが台風の如く、空中に舞っている。 「うわっ……」  私は一瞬目を細めると、「もうそんな季節か」と呟く。時間の流れというのは本当に早い。あの日、御堂さんに拾われてからもう3年の年月が経ったのだ。それはつまり、私がになって、御堂(みどう)さんに養われるようになってからもう3年も経つということだ。 「時の流れって怖いな……」  私は短い溜息を吐くと、家へ帰る足を早めた。背負っているライフルのケースと重みは、3年が経った今でもを覚える。
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

93人が本棚に入れています
本棚に追加