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散歩のフリしてドアを開けてもらい表に出た。
先ずは普段巡回して回るルートを辿るもお嬢は見つからない。
周辺に住む猫達も見かけていないとの話だし、マジで居所がわかんねえ。
もともと一番目立たないお嬢だったし、物陰に潜まれたら探すのは至難の業だ。
だからといって意味もなく生まれた訳でもあるまいし、消えて無くなって良い訳がない。
何よりも、いつも何かに怯えている婆ちゃんには、たとえ見えない家族でも一人でも多いほうが良いと思うんだ。
だってよう、皆やいのやいのと婆ちゃんに恨み言垂れてる割には、怯えて仏壇に手を合わせる婆ちゃんを見ると心配そうに周りに寄って来て覗き込んでるからな。
人間も幽霊も家族って簡単じゃあねえんだよ。
長く離れたら家族じゃなくなっちまうだろうから、どんなに複雑でも一緒に住んでなきゃなんねえ。
俺はそう思うんだ。
そしてお嬢は何処にも居ねえ。
公園も空き地も探した。
近隣のアパートやマンションの階段の暗がり、学校の倉庫や調理室、スーパーのごみ捨て場と搬入路、何度も何度も探し回った。
家から離れた河沿いの橋の下や、深夜の駅の線路とトイレ、如何にも出そうな病院の霊安室に屋上。
探しても探しても見つからねえ。
建物に入り込んでは追い出され、蹴られたりモノを投げつけられたり、すっかり傷だらけの汚え野良猫みたいなナリになった。
もう何日放浪したんだろうな。
いったいお嬢は何処に行っちまったんだろう。
もう、誰かに除霊されちまったんだろうか?
俺は家族を守れなかったんだろうか?
フラフラとトボトボと歩き回り、空腹で野垂れ死にそうだ。
婆ちゃんは、元気にしているだろうか。
俺がいなくなって、怖くて泣いているに違いない。
お嬢を連れて帰れないのが残念だが、一旦戻ろう。
婆ちゃんまで、失うわけには行かねえ。
家族は一緒に暮らさなきゃイケねえよ。
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