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彼の奥さんはしばらく黙っていた。
イタズラ電話だと思われたかもしれない、と思い今度は今までの経緯を全て話した。
これは脅しではない、私は彼と結婚する約束をしている、と。
けれども彼女が何かを言うことは無かった。そしてそのまま電話を切られたのだ。
穂乃香は自分の心の中にくすぶり続ける気持ちを消すことが出来なかった。イライラしながら真彦へと素直に電話した!とLINEした。
真彦は「ちょうど自分も切り出そうと思っていた、いい機会だ」と返してくれた。
カミングアウトの日、それが明日だ。
真彦は出張で3日家を空けていた。
その間にあんな電話を貰った彼女はどんな気持ちでいる事だろう……そう考えた時気分がスキッとした。穂乃香は嬉しい気持ちになるのだ。
「んー、なんだか可哀想だけど仕方ないよね。愛がないんだもんねー。」
真彦にもたれかかりながら穂乃香は小さい声で言った。
その上、だ。
真彦との間の子供が不幸の種であった。
彼の子供は知的障害のボーダーラインだと聞いている。それもあって今の奥さんと別れたいらしい。そんな障害者の子供なんて考えただけで恐ろしくなる。
穂乃香はブルっと身をふるわせた。それから雅彦の手を取り、
「私が可愛い子供、産んであげるからね。」
と微笑んだのであった。
「穂乃香、愛してる。子供も沢山産んでくれ。」
そう言うと2人はさらに寄り添いあったのであった……。
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