漸年寺響子が語る初恋のバッドエンド

2/8
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
◇◇◇  浅沼ことりとぼくは同じ高校に通っていて、二年に進級したとき、いっしょのクラスになった。  ことりは、そばかすだらけで、地味で、あまりしゃべらない子だった。クラスの女子たちのどのグループにも属していないように見えた。かといって、女子から陰湿ないじめを受けているわけでもないようだった。  地味な者どうしということだろうか、掃除当番でいっしょになると、おしゃべりしたものだ。  ことりには、美少女という要素はなかった。ミスコンなんてものからは、ずっと遠くに位置する女の子だった。でも、一度、ニッと笑ったときに見た歯の白さ。ただそれだけで、ぼくはことりのことが好きになってしまったんだ。  いまからふた月前、夏休みの直前に、ぼくは思いきって告白した。高いビルの屋上から飛び降りるような勇気が必要だった。  ことりはうつむき、もじもじして返事しなかった。  いや、口のなかで、なにか言った。 ――あの……ダメ、かな?  恐る恐るぼくが訊くと、ことりはうつむいてちらりとぼくを見上げ、また目を落とし、かすかに首を横にふった。それがOKの返事だった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!