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◇◇◇
浅沼ことりとぼくは同じ高校に通っていて、二年に進級したとき、いっしょのクラスになった。
ことりは、そばかすだらけで、地味で、あまりしゃべらない子だった。クラスの女子たちのどのグループにも属していないように見えた。かといって、女子から陰湿ないじめを受けているわけでもないようだった。
地味な者どうしということだろうか、掃除当番でいっしょになると、おしゃべりしたものだ。
ことりには、美少女という要素はなかった。ミスコンなんてものからは、ずっと遠くに位置する女の子だった。でも、一度、ニッと笑ったときに見た歯の白さ。ただそれだけで、ぼくはことりのことが好きになってしまったんだ。
いまからふた月前、夏休みの直前に、ぼくは思いきって告白した。高いビルの屋上から飛び降りるような勇気が必要だった。
ことりはうつむき、もじもじして返事しなかった。
いや、口のなかで、なにか言った。
――あの……ダメ、かな?
恐る恐るぼくが訊くと、ことりはうつむいてちらりとぼくを見上げ、また目を落とし、かすかに首を横にふった。それがOKの返事だった。
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