漸年寺響子が語る初恋のバッドエンド

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 こうしてぼくたちは付き合いはじめた。学校一恋愛にうとい男、と言われたぼくにとって、生まれて初めてのカノジョだった。ぼくは舞い上がった。 ――沢田、悪いことは言わないから、あれはやめたほうがいいよ。  ことりのことを「あれ」と呼んで忠告してくる男子もいた。ぼくは聞く耳を持たなかった。  ことりとデートを重ねたある日、ようやく手をつないだ。ちょっとしたはずみにその手が、彼女の控えめにふくらんだ胸に触れてしまい、ぼくはあわてて引っこめた。  互いに気まずくて、顔をそらした。 ――ごめん。沢田くんだって……したいよね? やっぱり男の子だから。  首をすくめ、冗談めかしてことりが言う。  性欲のかたまりだと誤解されるのが怖くて、ぼくは必死に首を横にふった。 ――ううん。ごめん。そんなつもりはなかったんだ。本当だよ?  すると、ことりはうつむきかげんにぼくを見上げた。その目が嬉しそうに見えて、ぼくは自分が正解を言ったものだと思った。 ――その……全然したくないとか、じゃなくて、いまはただ、浅沼さん……ことり……さんの、声を聞いたり、たまに笑うときの歯を見たりとか、それだけで、とっても嬉しいから。  つかえながら、やっとのことでそう言った。  自分でも恥ずかしくて顔をそむけていたが、反応がない。
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