漸年寺響子が語る初恋のバッドエンド

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 漸年寺は奇妙な表情をうかべてぼくを見た。薄く笑っているような感じだ。バカにしているのかと思った。 「そりゃ、お子ちゃまのママゴトみたいな恋愛だと言いたいんだろうけどさ」 「ううん、そんなことない。本当。全然そんなことないよ」 「ねえ、漸年寺さん、教えてくれ。知ってるんだろ、ことりが誰とセックスしていたのか?」 「……」  漸年寺はやはり答えない。  でも、ことりが誰かとセックスしたのは確かだ。  自殺したことりの遺体は調べられ、妊娠していたことがわかった。警察は、ぼくが妊娠させたのだろう、と疑った。ぼくは必死に否定したが、信じてもらえなかった。 ――浅沼ことりは、不順異性交遊の結果、妊娠し、それを苦にして自殺した。  結局、そういうことで片づけられてしまった。  級友たちの、ぼくを見る目がよそよそしくなった。  それまでは、たまにではあっても、ぼくのほうから声をかければ反応があった。でも、ことりが死んでからというもの、みんな、ぼくを遠ざけるようになった。
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