漸年寺響子が語る初恋のバッドエンド

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 ぼくは、ことりを妊娠させた相手を知りたかった。  ことりには、クラスに同性の友達はいなかったが、それでもクラス委員の漸年寺響子とは、ときどき話をしていたようだった。  だから、放課後に、先生も生徒もあまり通らない、突き当りの特別教室に来てもらって、尋ねたのだった。  そしたら驚いたことに、漸年寺は、ことりが妊娠していたことを知っていたという。ことりから相談されていたのだ。  それなら、と、ぼくは相手の名前を聞き出そうと、食い下がった。  しかし、漸年寺は教えてくれず、 ――ねえ、沢田くん、世のなかには、知らないほうがいいこともあるのよ。  という、冒頭のセリフとなったのだった。  ぼくの訊きたいことにはなにも答えようとはせず、やがて漸年寺は、もうこれ以上は無駄だから、と打ち切りを宣言した。  そして別れぎわに、こう言ったのだった。 「沢田くん、わたしからあなたに、これだけは言っておきたいの。浅沼さんにとって、沢田くんは、初めて好きになった男の子だった。あなたは、まちがいなく彼女の初恋の人だったのよ」
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