自殺願望

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「お姉さん?」 「きゃっ……あーびっくりした。なに? どこの子? 子供がこんな夜中にフラフラ出歩かないほうがいいわよ」 「うん。ぼく、今度中学を受験するんだけど、試験勉強のあいまの散歩だよ。ちょっとこの公園をブラブラしようと思ってね。で、お姉さんのほうは、こんな夜中にどうしたの?」 「わ……わたしは、その……わたしもちょっと散歩しようと思って……」 「ふーん、ぼくはまた、自殺しようとしてるのかと思っちゃった。さっきから見てると、その大きな木の枝に、輪っかを作った太い縄を縛りつけてたし」 「なによ。あんた、ずっと見てたの?」 「ううん、ずっとじゃないよ、ほんのちょっとだけ前から。あっ、もし自殺したいんだったら、ぼくのこと気にしないで続けてください」 「なにバカなこと言ってるの。自殺なんてするわけないでしょ。これは、その……あ、そうそう、わたし、アマチュア劇団に入ってるの。それで、今度、首吊りする役やるから、そのための研究なのよ」 「こんな夜の公園で?」 「そうよ。夜の公園でヒロインが首つり自殺する、っていう設定なのよ」
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