自殺願望

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「それから、いま思い出したけど、世のなかには、死体とエッチするのが趣味だっていう変態までいるみたいだよ? 自殺したあと、そういう変なのに見つかったら、死体を降ろされて、自分ちに運ばれて、服を全部ぬがされて――」 「いやあっ! もういやあっ! あっ、あそこにおまわりさんがいる。おまわりさーん、助けてくださーい。変な男の子にからまれてるんですーっ」 「あ……あー、行っちゃった。まあ、少なくとも今夜は自殺しようとは思わないだろうな、あのお姉さん。これでようやく自殺をひとつ食い止めたぞ。ぼくが自殺したのが、先月のこと。中学受験で悩んで、首をつったわけだけど、死んでから後悔したんだ。親より早く死んだ罪で、地獄に落とされたし。でも、地獄の役人が、一年以内に四人の自殺を食い止めたら、恩赦を与えて天国へ送ってやる、って約束してくれた。それ以来、幽霊になって、自殺を食い止める仕事をしてるんだけど、なかなかうまくいかなかったんだ。でも、今夜、三人目にしてやっと食い止めた。残るノルマはあと三人だ。がんばろう。さて、向こうから警察官も走ってくるし、ここいらでパッと消えるとしようかな、幽霊だけに」                               (了)
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